「なあ、朔間~。今日って空いてるっけ?」
夕方のカフェ、アイスコーヒーをストローで音を立てて飲んでいた朔間零は、顔を上げることなくスマホをいじりながら返した。
「んー……空いてるには空いておるが、何か用事でもあるのかや?」
「よし、じゃあ決まり!」
急に嬉しそうに身を乗り出してくる友人に、零はようやく顔を上げて軽く眉をひそめる。
「決まり、って何が」
「地下アイドルのライブ! チケット余っててさ~、オレ一人で行くのもな~って思ってたんだけど、朔間なら誘ってもいいかなって」
「……地下アイドル?」
「そうそう。『女装男子グループ』っていうカテゴリで、最近めちゃ人気出てきてんの! 今日出る子たち、マジでクオリティ高いから!」
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