1 机に齧り付いていると扉がひらいた。コーヒーの香ばしい香りとともにオクジーが入ってくる。
「ずっとやってるんですか」
「きみは今起きたのか」
「アラームかけてました。今日は雲がなかったので」
まだ眠そうに目を擦っているが、すでに身支度を済ませたようで片手にリュックをぶら下げている。
「今から行くのか」
「はい」
「コーヒーを飲んだら私も行く」
「じゃあ先出てます」
オクジーがおいていったコーヒーを飲み干すと、バデーニは書類をしまって外に出た。懐中電灯を片手に、オクジーは庭に立ち空を見上げている。まぶしすぎず暗すぎない下向きの光は、バデーニの弱視に配慮し光量を固定していた。「行きましょう」オクジーに足元を照らされ石段を下り、川べりを歩いていく。
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