家庭内残業現在時刻22時。大抵の人間は帰宅し夕食を取り、それぞれの時間を過ごしているだろう。
自分も例にもれず、つかの間の安らぎに浸っていた。
携帯の画面に映っているのは、気だるげにアイロンビーズを並べている人外お兄さん。名を画らくたという。一体どれくらい推しているのだろうか。動画は何週もしたし、なんなら布団にグッズの抱き枕がある。
しかしこれだけが仕事から帰ってきた自分の生きがいなのだ。外で擦り切れれば擦り切れるだけ、お兄さんは褒めてくれる。
とは言え……。
"ブーッ、ブブーッ"
「メール?こんな時間に誰から……はぁ?!」
送り主はまさかの上司、文面をかみ砕くと急遽予定していた納期が前倒しとなり、自分が担当していたラインの作業を今日中に終わらせろとの指示だ。
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