青天白日マスターという、一種主従関係になるらしい少年は、インドラにテントを献上した。厳密には女だとも言えないので配慮は不要と返そうとしたのに、アルジュナが――ここではオルタ、と呼ばれているらしい――受け取ってしまった。そういう経緯で目を覚ましてからこの狭苦しいテントでアルジュナと過ごしている。
「前から思ってはいたが……随分甘えたになったな、お前」
「不快でしたら改めます」
「良い、許す。今更だ」
アルジュナは当たり前のようにインドラを抱き寄せて唇で眦に触れた。
「さて、マスターは眠ったようです。行きましょうか」
「何処へ」
微笑んで抱き上げられる。だから歩けると言っているだろうと、何度目かもわからない事を口にするのに、これもお許しを、とだけでアルジュナがインドラを降ろす事は無く、インドラ自身も降りようとはしなかった。嫌な習慣がついたなと思っていたらアルジュナは足を止め、インドラを下ろすと突然服を脱ぎだした。
「さあ」
「……」
そこは昼間、インドラが入る事を止めた川で、足先だけの戯れでも澄んだ水は心地よかったのに、水浴びをしたいと思っていた事がアルジュナには伝わっていたのだろう。何しろインドラの殆どはアルジュナの中に、
(嗚呼、違うか。今は神の中に。ならばアルジュナの心が察して)
「全く……」
纏っていたのはシーツだけだった。一行とは少し離れた位置に設置している小さなテントは、夫婦の寝室と化している。
「マーニー神」
「今行く」
一糸まとわぬ姿で川に進む。月の光が水面にあたって美しく、綺麗な水で体を洗えるのは気持ちが良かった。遠慮なくアルジュナの髪も洗っておいたので、翌日はふわふわの髪の毛を堪能する事が出来た。