夕暮れの記憶今年で大学3年生となるアキラ。
今年度の下期は、必修科目の関係で火曜日にだけ6講があり、どうしても帰るのが遅くなってしまうのだった。初回のオリエンテーションを終え、同級生への挨拶も程々にそそくさと帰路につく。
いつもならもうとっくに帰宅しているような時間帯、家から最寄りのバス停を降りる。通学のため大学から少々離れた安いアパートを借りているのだが、3年目となるともうすっかりこの辺りも見慣れたものだ。
晩夏を思わせる、少し涼しいような、けれどもまだ湿気を帯びたような…なんともいえない不快な風が、アキラの頬をなでる。日照時間は日に日に短くなっており、家々の連なる風景は夕暮れに照らされ真っ赤に反射し、黒く長い影を落としていた。
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