うちのちせくん(バスケ現役時代編:インタビュー記事より)──とあるアジア圏の国との国際親善試合を終えた数日後。
◇ ◇ ◇
-記者
改めまして、先日の親善試合、大変お疲れさまでした。
-九頭竜
ありがとうございます。
いや~、めちゃくちゃ緊張しましたけど、楽しかったです。
向こうの選手、フィジカル強いし、展開も速くて、勉強になりました。
試合後、ロッカールーム戻ってからちょっと放心してましたけど(笑)。
でもやっぱり、国の代表としてコートに立てるってすごいことだなって、
あらためて実感しました。
-記者
プロ1年目でのスタメン起用は非常に珍しいケースかと思いますが、
ご自身ではどのように受け止めていらっしゃいましたか?
-九頭竜
いやもう……プレッシャーすごかったです(笑)。
最初にスタメンって聞いたとき、「マジか」って声出ましたもん。
でも、ありがたいことにチームメイトがすごく支えてくれて。
「お前が司令塔なんだから自信持て」ってベテランの方たちが言ってくださって、
なんとか腹くくれたというか。
それでも、最初の5分は脚ガクガクでしたけどね(笑)。
自分としては、まだ“入り”じゃなくて“入れてもらってる”立場だと思ってるんで、
そこはちゃんと自覚して、一戦一戦必死で食らいついていきたいです。
-記者
私も当日、会場で拝見していたのですが、
プレッシャーを感じさせない落ち着いたご様子が印象的でした。
-九頭竜
いや、それはもう……全力で「平気なふり」してました(笑)。
緊張してる顔してると、相手に読まれるじゃないですか。
だから、できるだけいつも通りに見せようと思って。
実際、目の前のプレーに集中してたら、だんだん周りの声も気にならなくなってきて。
自分の動きがチームにちゃんと繋がってるって実感できた瞬間があって、
そこで一気にスイッチ入りました。
……でも試合終わってロッカー戻ったら、
ユニフォームの背中、びしょびしょでした(笑)。
あれ、たぶん汗よりも、緊張のせいっす。
-記者
対戦相手も九頭竜選手をかなり警戒していたように感じられましたが、
その点についてはどのように意識されていましたか?
-九頭竜
いやもう、びっくりするくらい寄ってきてて。
正直「お前ら俺のこと知ってるんか?」って内心ツッコミ入れてました(笑)。
でも、そこまで警戒されるってことは、それだけ期待されてるってことだと思うんで。
むしろありがたいというか、やってやるぞって気持ちが強くなりましたね。
ただ、自分が囮になることでスペース空けて、
味方が決めてくれた場面も何度かあって。
そういうのが、司令塔として一番気持ちいいっす。
コートの上で、ちゃんと「機能してる」っていう感覚。
-記者
第4クオーターでの逆転劇には、思わず引き込まれました。
-九頭竜
ありがとうございます。あれは……正直、自分でも鳥肌立ちました(笑)。
あの場面、点差はあったけど、流れは完全にこっちに来てたんで、
「ここで俺がギア上げなきゃ、司令として意味ないな」って思って。
チームの空気も、ベンチの熱量も全部背中に感じてたから、
あとはもう、迷わずやるだけでした。
でも俺だけじゃなくて、あの時間帯、全員が“ハマってた”んですよ。
誰かが点獲るたびに目が合って、声が出て、次に繋がる感じ。
…あれがチームスポーツの醍醐味だと思います。
-記者
得点が決まった瞬間、会場全体が一体となるような空気に包まれていましたが、
選手の皆さんにはそうした観客の熱気は伝わっているものでしょうか?
-九頭竜
感じますよ、すごく。
むしろ、あれって選手にとっていちばん効くドーピングだと思ってて。
得点決まったあとに、ドッて歓声がくるじゃないですか。
あの瞬間、「あ、今、俺ら流れ持ってる」って確信できます。
正直、冷静でいなきゃって頭では思ってても、
観客の反応ってめちゃくちゃ肌にビリビリくるんですよね。
立ち上がる人の姿なんかが視界の端に入ると、
もう、自分の中のスイッチまで押される感じで……。
だから、あの時の歓声は本当に背中押されました。感謝してます。
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-記者
「次世代の司令塔」とも称されるご自身の立ち位置について、
どのように受け止めていらっしゃいますか?
-九頭竜
正直、まだまだ実力が追いついてないなって思います。
「司令塔」って呼ばれるの、すごく光栄なんですけど、
僕自身はまだ一つひとつのプレーに精一杯で、
周りを“動かす”っていうには、経験も視野も足りてないと思ってます。
ただ、そう言ってもらえるのは――
たぶん、僕が「声を出す」タイプだからじゃないですかね。
プレー中ずっと喋ってるし、動きも指示も割とハッキリしてるんで、
そう見えるだけだと思います(笑)。
でも、いつか名前だけじゃなく、内容で納得させられる選手になりたいです。
「九頭竜がいるから、試合が回る」って自然に思ってもらえるような。
そのために、今はもっともっと、勉強して、やれること増やしてくしかないなって。
-記者
チームメイトの皆さんから、
こうした呼び名について何かお声をかけられることはありますか?
-九頭竜
言われますね、いろいろ(笑)。
「お前ほんと声だけは通るな!」とか、
「コート上での態度と普段のギャップえぐい」とかも。
あとは、「試合中、顔がうるさい」って言われました。
喜怒哀楽が全部顔に出てるらしくて……無意識なんですけど、
煽ってるって思われることもあるみたいです(笑)。
でも、みんなほんとによくしてくれてます。
僕みたいな若手にちゃんとボール回してくれたり、
ミスしても「次がある」って声かけてくれたり。
信頼されてるぶん、応えたいって気持ちはすごく強いですね。
あと、なんだかんだで皆さん、
僕のことちょっとかわいがってくれてる気がします(笑)。
-記者
公式SNSにも、チーム内の和やかなご様子がたびたび掲載されていますね。
-九頭竜
ですね、あれ、恥ずかしいくらい仲良く映ってますよね(笑)。
カメラ向けられると誰かしらがふざけてくるので、僕もつい乗っちゃうというか……。
でも、そういうのがチームの雰囲気そのまんまだったりします。
オンコートでは真剣勝負だけど、オフではほんとにリラックスしてて。
それこそ、遠征先のホテルとかで「九頭竜、筋トレ付き合え」って
夜中に呼び出されたり(笑)。
ああいう日常があるから、試合のときにも自然と背中預けられるんだと思います。
だからSNSで映ってるあの空気感は、作ったものじゃなくて、素のままですね。
(以下略)
◇ ◇ ◇
──っていうの、一生読んでいたい。
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