次どんな顔で会えばいいんだ今日は放課後に石切丸先生が来てくれる日、だというのに僕はなかなか寝付けずに朝を迎えてしまった。
なんとか学校の授業は耐え抜いたんだけど、夕方石切丸先生がきてからは疲労のピークで、石切丸先生の優しい声を聞いていたらつい船を漕いでしまった。
「どうしたんだい、青江くん。珍しいね」
そう言って僕の顔を覗き込む先生。目の隈がひどいよ、とそっと頬をなでてきて、触られた部分が熱くなるのを感じた。
「ごめんなさい、昨日寝られなくて」
せっかく先生が来てくれてるのに、僕は情けない。きゅっと目をつむる。ふわっと大きな手が頭に乗せられて、ワシャワシャと撫でられた。
「わ、わ、なに先生」
「そういう日だってあるもんさ。少しでも勉強を進めたいなら、数十分だけでも仮眠をとるのはどうかな?」
え、でもそんな、と突然の提案に戸惑う僕。そんなことお構いなしに、石切丸先生は僕を抱きかかえた。
「ふふ、こうされたらもう寝るしかないね」
強情な僕の性格を見透かしているのか、何食わぬ顔で僕をベッドへと寝かせる先生。なぜか隣に寝そべってくる。普段なら寝るどころの話ではないのだが、先生の服の香りがふわっとただよい、ベッドの柔らかさもあいまって僕はきもちよくなってきて、意識が沈んでいった。まだ頭がなでられているような気がする。
眠っていたのは一瞬のようで、しっかり時間は経っていた。ふと目を開けると、先生のきれいな紫の瞳と目があった。
薄暗い夕暮れの中、ふたりきり、ベッドの上。
突然恥ずかしさが込み上げてきて、ぁ、と変な声が出ると同時に、先生はにこりと笑って僕の唇の端へと指を伸ばした。
「ひ、ぁ、せん、せ?」
真っ赤になって僕はやっと声を絞り出す。
「青江くん…」
穏やかに微笑みを浮かべる先生に、僕の心臓はめいっぱい叫んでる。なに、この状況。
「よく寝てたね。ほら、よだれがちょっと…」
「は」
僕は先程とは違う恥ずかしさでいっぱいになってしまった。
大好きな先生の前で、熟睡して、よだれを垂らすなんて!!!
そのあと1時間の講義はまったく身に入らなかった。
先生、次来るときまでに忘れてくれないかなぁ…。
「あんなに無防備に私の前で寝てしまうなんて、可愛いねぇ。あの寝顔、写真を撮っておけば……いや、青江くんに申し訳ないよね。記憶にしっかり刻んでおこう。……でも、そうだな、あまり人前で無防備にしてはいけないってことも教えないといけないかな…?」