ああもうキミって人は すっかり日も暮れた夏の里の夜。
仕事が終わりクサツ旅館で汗を流した後、スバルは里の入り口付近にある『茶屋白砂』で一服していた。
夜空を見上げると、満点の星空が輝いている。夏の大三角形を探していると、柏手の音が聞こえ何となくそちらへ目を向けた。
熱心に祈りを捧げているのは、カグヤ――彼の恋人だ。
元々モコロンを祀って作られたものだというのに、殊勝なことだ。
深々と頭を下げた後、こちらへと振り返った彼女と目が合った。手を振り、隣を軽く叩くと凛とした表情が柔らかく綻んだ。
「こんばんは。スバルはひと休み中ですか?」
「うん、今日は早く上がれたからちょっと寄り道をね」
「そうですか。何を飲んでるんです?」
隣に座ったカグヤがスバルに身を寄せる。
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