逃亡 ふかした煙草の煙が、遺品にかかってしまいました。私を殺しに来た"元"同胞の物です。色々、やってしまいましたから。
だから、私たちは山の奥まで逃げてきたのです。前線から遠く離れた山の中なら安全だろうと思い込んでいました。いざ蓋を開けてみればそんなことはありません。数多の軍人が目を血走らせて追ってきました。私の元同胞達が。
大きく溜め息をつきました。肺の中の煙が口からゆっくり溢れて、空へ登っていきます。
戦争は我々イカの勝利で終わったと、風のうわさで聞きました。だから、元同胞たちは一兵卒を追ってくるくらい暇なのでしょう。
軍規違反は見逃せないのでしょうか。それとも私の伴侶に用でもあるのでしょうか。
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