ある日の夜海月海岸、浜辺にて。
鈴木凪(=ユラナギ)は何をするわけでもなく、ただそこに佇んでいた。
「やあ、久しぶりだね。」
知っている声。その正体は平田藍ことヨヒラ。
「こんな夜更けに…眠れないの?」
「ははっ、俺達もともと眠れないじゃん。」
「それで、どうしたの?わざわざ訪ねてくるなんて。何かあった?」
「ただ君に会いたくなっただけさ。理由なく会いに来ちゃだめなのかい?」藍はそう言って微笑む。
二人は土着神。凪は海月町を、藍は凉暮町を治めている。土着神は基本的に自分の土地から離れない。二人がご無沙汰だったのもそのためである。
凪はおよそ1400年前から、藍はおよそ600年前から存在している。二人は800歳ほどの年の差があるが、先輩後輩の立場関係なく仲が良い。人間風に言えば二人は友達なのだ。
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