『小学生男子とストーブの冒険』++++++ ちみにぃさん
『小学生男子とストーブの冒険』
「さっむ」
少年が白い息を吐く。そのわりにハーフパンツなのが気にならないと言えば嘘になるが、小学生男子なんてそんなものだろう。
「ただいまー……なんだこれ」
少年が帰宅すると、玄関に見慣れないものが置いてあった。
それはファンヒーターとは違う、昔ながらの灯油ストーブであるが、今どきの子供はそんなものは見たことがなかった。
「うーん?」
なんらかの焦げ跡のついている上部の鉄板部に触れてみる。
すると、ストーブの金網の中、円柱部分が赤く光り……。
「うわぁ!?」
一瞬のまばゆい閃光──そして、少年とストーブは、その場から消えていた。
++++++ いとま
気が付くと少年は見知らぬ海、砂浜に横たわっていた。
隣には先ほどのストーブ
自宅にいたのに見知らぬ海にいる事実に驚く中、
「ねぇねぇ」と声が聞こえる
声の主を確認するとそれはストーブから聞こえる
「ねぇ~~~聞いてるの???」
少年は思ったこの声色男・・・つまりオネェだと。
++++++ たけのこさん
「アナタ、アタシの声が聞こえるのねぇ?アタシはストーブの精霊アナスタシアよぉ〜好きな物はサウナといいオトコ♥️」
「なんで…ぼくは砂浜に??」
「実はアンタ、寝てる間になんか色々あって死んだのよォ。でもそれは神様の手違いだったので、お詫びとしてオプション付きで転生出来ることになったのぉ!でも特殊能力とか才能とかぶっちゃけ必要なくなァい?爆笑 って思ったからオプションとしてアタシが勝手に付いてきましたぁ♥️」
「はぁ?ふざけんな何勝手にしてんだよ!せっかくチート能力で生まれ変われるチャンスだったのに!このクソストーブ!灯油抜くぞ!」
++++++ ゆうりさん
灯油抜くぞとつい勢いで言ったがぼくは悪くない。悪いのは神さまと目の前のクソストーブだ。
「灯油式!ぷふっ!!あらやだごめんねぇ、灯油なんて古臭い言葉聞いたの久しぶりで笑っちゃったぁ。ボクっていったい何年生まれ?今の時代は電気よ、で・ん・きはぁと」
「なんでもいいけど、いやよくねーけど、とりあえずついてくんな!!」
話しながら見慣れない景色をひたすらに歩き続ける。
昔絵本で見たドラゴンや魔法使いがいる世界に似た建物が見えてきて少しテンションが上がる。
なのにいちいち近くで「こんなので楽しくなれるって、若いっていいわねえ」とか
「ほらボクみたいなちっちゃい子があそこにいったところでロクでもないことになるよ」とかうるさい。
++++++ くるるさん
その時、停電が街を襲った。
街灯は消え、世界は暗闇に。
電気ストーブ達も、温もりを失う。
「どうしよう、このままでは街は滅んでしまう!」
「大丈夫、ここに灯油式ストーブがある」
「でも、灯油がない!」
僕はにこりと笑うとストーブを抱きしめて心を通わせる。
「僕は灯油の温もりが好きなんだ。電気にはない温もりが」
空っぽになった、ストーブの灯油タンクに手を伸ばし、僕の心を流し込む。
とくんとくんと、静かに満たされていくストーブ。
一抹の、いな、確かな思いを胸に点火スイッチを押した。
ぽおっと明るく灯るストーブの火、文明の火、温もりの火。
電気を失ったこの街で、唯一無二の希望が灯った。
「ほら、電気のみんなもあたりにおいで」
「いいの?あんなに君を揶揄ったのに」
「寒いのは嫌だろう」
そうしてみんなは幸せになりましたとさ。