覗く深淵はぞっとするほど深く無辜ならざぬ者を奈落へと呑み込み、羅刹が喰らう咎人の烙印を持たされし者に 俺は、常々、
こいつの瞳は、血のようだと思い続けていたけれど、なるほど、
こうしてまじまじと見てみると、それは、
"斜陽のような"と形容する方が適切かもしれない、なんて、
そんなことを、ふと考えさせられた。だって、
今まさに奴の背後で、
崩れかけた廃墟の洋館と、その先にある森の枝葉に呑まれようとしている朱色の天道は、
網膜に染みる光華を放ちつつも、
目を焼く暴力的な昼日中のそれとは明らかに異なり、その輪郭をしっかりと見極められるくらい熱を収め、
艶やかな金色(こんじき)に染まった雲にその身を彩らせているのだけれど、それはまさに、
灼熱を有しているようでいて、酷く冷ややかで、その実、
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