夏休み 畳の感触にまどろみから浮上する。乾いた草の匂い。古びた畳の匂いだ。
じとりとした汗が首筋にまとわり付いている。何か夢を見ていたような気がする。けれどそれもすぐにがなるような蝉の断末魔で掻き消えてしまった。
なにか、嫌な夢だったような気もするし、懐かしい夢だったような気もする。
消えてしまった夢の断片を探るように瞬きをして、ごろりと目を開いたまま寝返りを打つと、腹の上に薄手のタオルケットが掛けられているのに気が付いた。
「起きた?」
頭の上から降ってきたその声に、尾形は視線だけをそちらに向けた。
胡坐をかいた杉元が何かを飲みながら尾形を見ていた。尾形はそれに返事をするでもなく、黙ってそれを見た。
「尾形も飲む? 喉渇いただろ」
1987