朝 いつもより早く目が覚めてしまった。夜明け前の今の時間はまだちょっと寒いけど、2度寝するにはもったいない気持ちのいい朝になりそうなので、庭でヴァイオリン鳴らすのもいいかもしれない。そう思って階下へ降りていくと、ラウンジに明かりが灯っているのに気がついた。
もう誰か起きてきてるのかな?
ひょこっと顔だけ出して覗き込むと、隅っこのソファにこんもりした山が見えた。見覚えのありすぎる色と形……。近づいて小さく声をかけてみる。
「……おはようございます?」
「おやすみ…。…ん? ああ…もう、おはようか…」
なんだかぼーっとしてる笹塚さん珍しいな。いま寝てましたよね?
「いつの間にか朝か…。ああ眠……」
くわぁと開いた盛大な欠伸を見てしまった。背が高くて体型もがっしりしてるし、手も大きいけど口も大きいので、一瞬クマに見えて、食べられるんじゃないかとの錯覚を覚えてしまう。
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