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    yjumcxh

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    今日電車で書いたやつです。文字久しぶりすぎて書き方忘れました。2021/06/21

    「ヘーイボス、起きないと遅刻するぜ」
    「ん〜…」
    クリフは枕に顔を埋めてむずがる雇用主の肩を叩いた。朝の約束の時間は過ぎていたが、クリフの好む透き通る青い瞳は硬い瞼の向こうに隠されたままだ。
    「ボースー」
    「…ぅ〜…あと…5分…」
    リックはぐずって起きる気配がない。クリフとしては甘える雇用主の相手をいつまでも続けていたいところだが、リックに遅刻をさせて彼が自己嫌悪に陥ることは避けたかった。クリフは心を鬼にし、リックを覆うシーツを捲った。
    「ヘイ、起きろ。もう10分も…」
    「…〜、まぶしいっ」
    「うおっ」
    光を嫌がったリックは常ならぬ素早さでクリフの手からシーツをもぎ取った。クリフが呆けた一瞬の間に頭まで覆い隠し、身を丸める。瞬く間に成人男性大の白い繭が誕生した。
    「んん〜…」
    もぞもぞ動き、落ち着く場所を見つけた繭は沈黙した。暗くて暖かくて快適だろう、放っておいたら何時間でも眠れそうな体勢だ。
    さて、どうしたもんかな。
    クリフは顎を撫ぜながら思案した。このまま無理にシーツを剥がしても起こすことは出来るだろうが、リックが不機嫌になる事は必至だろう。親の仇を見るような形相で睨まれてもクリフは気にしない(むしろリックのファンであるクリフにとっては嬉しい)が、「お、起こしてくれたのに当たってごめんな」と車内で半泣きで謝られるのは苦手だった。気にするなと言って素直に聴く性格じゃない。おまけに、クリフは自分の慰めに自信がない。
     リックの枕元に朝食を持っていって起こしたこともある。就寝中でも動物の嗅覚は起きているもので、クリフ特性トーストの芳しい香りに誘われリックは覚醒した。したはいいが、その後テーブルに着いたリックは俺はメシに釣られるのか…と複雑そうな顔でトーストの耳を齧っていた。クリフはリックのまるい頬を眺めながらこのやり方はリックの自尊心のために控えた方がいい、と脳内のメモに記入した。

    リックの機嫌を損ねる事なく起こす方法…。

    悩むクリフの脳みそにひとつのアイデアが浮かんだ。リックを揶揄って、少し怒らせてみるのはどうだろう?リックの怒りの瞬発力はすばらしい。それを燃料に覚醒してもらおう。もちろん、怒らせ過ぎはNGだ。例えばブランディにするように体を擽るようなじゃれつきなら、揶揄うな!とリックは飛び起きるのではないか?クリフにはこの方向性が良いものに思えた。しかし、あからさまに犬と同等の扱いをするのも憚られる。適度にリックを怒らせられるような、冗談で済ませられる程度のおふざけ…。
    ひととおり思考を巡らせたクリフは脳内でシミュレートを済ませ、作戦を立てた。おそらくクリフとリックの距離感なら許される範囲だろう。本気で怒らせてしまったらその時だ。悪ふざけが過ぎたと謝って、ご機嫌取りに徹する。

    クリフは作戦を実行に移すため、ベッドの上に乗り上げた。筋肉質な男の重みでマットレスは沈み、ベッドの上の二人の人間の熱を近づける。リックの頭の横についたクリフの無骨な手を、高級枕は柔らかく受け止めた。
    クリフはリックの耳があると思わしき部分にそっと唇を寄せ、甘ったるい声で告げた。
    「…なあ、リック、起きないと俺に食われちまうぜ」

    丸い塊がビクリと震えた。

    それと同時に繭がガバリと跳ね起き、身を寄せていたクリフの鼻をリックの後頭部が強打した。
    「ゔっ?!」
    「……おっ!おおお起きた!めし!あ、ああ朝メシは?!」
    「……っ…用意してある、テーブルに…」
    クリフは痛む鼻を押さえながら顔を上げ、リビングを指した。リックはろくにクリフを見る事なくベッドを飛びおり寝室を出て行った。リックが慌ただしく脱ぎ捨てたシーツがクリフの頭に掛かっても、クリフは退ける気が起きなかった。
    鼻を押さえた姿勢のまま、クリフは今しがた目撃したリックの耳の事を考えていた。クリフのシミュレートにおけるダルトン邸の寝室の光景はこうだった。俺はゲイじゃない!2度とすんな!とツンとして寝室を出て行くリックの姿と、悪い、もうしないよと両手を挙げる己の姿。もっとも、半分寝ている相手が全く反応もないということもあり得た。クリフの下心を多分に含んだセリフをどう受け止められても構わないと思った。

    シーツを剥いだリックの耳は真っ赤だった。
    現実はクリフの予想外のものだったが、この誤算はきっと喜んで良い。クリフは鼻の痛みと関係なくうめき声をあげた。
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