「戦争映画だけあって火薬の量が多いな。耳がいてーぜ」
街の中心から離れた郊外での撮影だった。ハイウェイで帰路につく車でリックが愚痴る。爆発物を使っていても、スタントではなく役者本人が演じなければいけないシーンもあった。俺もリックもそんな中で撮影をしたせいで車内には火薬の臭いがしていた。
「イヤーマフを借りればいい」
「セットが崩れるからできないんだよ。」
「役者は大変だな」
「なんで他人事なんだよ。お前だってそうだろ?」
「そうだったか?」
「そうだよ。スタッフに言われたろ?なんだ、疲れてるのか?クリフ」
俺の返事にリックが訝しむ。疲れているとは感じない。体力的には何の問題もないスタントだった。
「そんな事はない」
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