ゆめのおわりこれは夢なのだろう

目の前にいるのは密かに想いを寄せているがそれを伝えるられずにいる相手…弟弟子の姿。
ただいつもの緑の法衣から、普段は見ることができない肌を惜しげもなく晒している。
だらしない着崩し方を注意すべきだとは思いながら、その肌に釘付けになっている。

「見るだけか？」
ポップが手を伸ばせばすぐその肌に触れることが出来る距離で言う。

「なあ、触って…くれねえの？」
首をかしげるように、可愛い仕草。
その姿に己が熱くなる感覚と、思わず伸びそうになる手。なんとか理性を保とうとするが、しかしいつもと様子の違う妖艶ともいえるポップから目が離せない。
その時ふっと一瞬伏せられた目と悲しそうな顔を見た気がした。
「ポップ…」
なんとか出せた声は相手の名を呼ぶことだけだった。
「いいや…じょーだん！冗談だって！」


「おれ、旅に出ようと思うんだわ」
服を整えながら先程の雰囲気は幻だったかとおもうほど、いつのも調子でポップが呟いた。
「なっ」
ポップが立ち上がってドアの方へ歩きだそうとするのを思わず腕を掴んで止めた。
ポップが一瞬ビクッとしたことが手に伝わってくる。
「悪いなヒュンケル。今回はおれ一人でいくからさ」
「……危険すぎる。オレも…いやせめて誰かと…」
「ちょっと調べものしに行くだけだぜ？大丈夫だよ。すぐに戻るし」
ポップはにこっとわらう。
そして掴まれた腕を見ながらぼそりと呟いた。
「……こういうときは触れるのにな」

その言葉に、おもわずパッと手を離すとドアが閉まった

はっと目が覚めた
いつもの自分の部屋で、今のはポップの姿はもちろん無く、朝の光が窓から差しているだけだった。

あの言葉はどんな意味だったのか…
ポップが帰って来たらその意味を聞いてみるか
その勇気が己にあるのか
その答えはポップが戻らぬ日々に埋もれていった。


窓の外の景色が雪がとけ花がさき春にかわる

あの日のポップは本当に夢で、それを待ついまもまだ夢の中なのではと思えてくる。
何度も思い出しては己の情けなさに後悔をするのだ。

「ポップ…あれは夢で今も夢の続きを見続けているのだろうか」
ひとりごちる

「じゃあこれも夢ってこと？」
突然聞こえてきた声にどきりと胸の鼓動が高まる。緊張しながら声のするほうを見ると
窓から差す月の明かりを遮る影。
「ポップ…！」
いままさに待ち望んでいたその姿。
「…夢の続きが見たいのかい？」
ポップが手を伸ばしてこちらに微笑む。その手を掴んで引き寄せた。
２度と居なくならないようにと…力強く抱き締める。

「力つえぇよ」
「すまない」
謝りながらも力を緩められない。
「…あの時結構勇気だして行ったんだぜ。それなのにおめえときたら…」
「すまない」
「あっ！だから出ていったんじゃねえからな！失恋旅じゃねえし！ほんとに調べものがあったんだからな！」
「ああ…」
「おれが居なけりゃ素直になりやがって…」
「すまない」
「…どうする？夢の続きが欲しいか？」
抱き締める力を緩めてポップをみる。
「いいや────夢はここでおわる。ポップ…」

ポップの顔を撫でながら
「おまえが欲しい。これから先はおまえと共に居たい。どうか、もっと触れさせてくれ」
「…へへ、途端にこれかよ。しょうがねえから全部かなえてやるよ」
照れたように笑うポップ。

おはようヒュンケル
今度はおれ(現実)とつきあってくれよ