夏の夜を、君の隣で一緒に花火を見に行きたい。
ある夏の日の午後、長嶋にそう誘われた。
先ほどからやたらと落ち着きがないというか、そわそわしていたのはこれが理由か。
顔が赤く染まっているのは、夏の暑さのせいだけではないだろう。
普段は無駄に威勢のいい少年が、自分を誘う時はこんなにもしおらしくなるのか。そう思うと、おかしさと可愛らしく思う気持ちで笑みが漏れそうになる。
その健気さに応えてやりたい気持ちは山々なのだが……
「悪いな、その日は仕事の予定が入ってる」
「……そっか」
そう告げれば、長嶋は分かりやすく気落ちする。まるでお預けを食らった犬のようだ。
感情がすぐ態度に出るところは見ていて飽きないが、こうもあからさまに落ち込まれると流石に罪悪感を覚えてしまう。
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