絶望より苦い色(二)二.
闇の眷属が本来の力を取り戻す夜が差し迫るにつれ、空は濃紺に塗り潰され気温は少しずつ下がり始める。動く気力を失った指先から徐々に冷えて行く反面、硬い皮膚の下で心臓の音はどくどくとうるさい位に鳴り響いている。時間が経つにつれ沸騰しそうだったマレウスの頭が漸く冷えて現状を理解しようと動き始める。まるで白昼夢を見ているような感覚がレオナの残り香さえ消え失せたあとでもしつこく付き纏っていた。
部活動にいそしむ生徒のざわめきももう耳には届かない時間帯だと漸く気づくと、寛げたままだった制服を覚束ない指先を振るいま方を使って元の状態に戻し、意識的に足に力を入れてマレウスは立ち上がる。辺りを見回し誰もいないことと、魔法が遮られるような気配が無いことを入念に確認すると、そのまま宙に浮かび上がりディアソムニア寮の自室まで転移した。
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