心を許す証執務の間の休憩。
珍しく出ていった従者を待ちながら、ヴァルバトーゼは本を読んでいた。
今の仲間たちには天然な部分が色濃く見えているだろうが、元々彼は頭もよく、知識欲もある。以前も本を読んでいたら、「ヴァルっちって本とか読むの!?」と言われたのは記憶に新しい。
だが本を読み始めて一刻程。
「…遅い」
出ていったフェンリッヒは、10分ほどで戻ると言っていた。
なのに遅すぎる。そう気付くと本を読んでなどいられなくなり、ヴァルバトーゼはそっと本を閉じた。
「何かあったか…?いや、あいつに限ってそれはないか」
そこらの悪魔に絡まれたとて、そう簡単にやられる男ではない。
信頼があるからこそ思うことだが、一度心に浮かんできたものは消えない。
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