もう行ってるから大丈夫「うわ、イケメン」
彼を目の前にしてぽろりと出てしまった言葉を押し戻すように口元を押さえた。そんなことをしても音として発されてしまっているものをなかったことにはできない。見上げるような高さにある紅い瞳はきょとんとこちらを見つめていた。通った鼻筋と色味が薄い肌、仕立てがよさそうなスーツを纏った恵まれすぎてる体格。実際目の当たりにしたその見目は、雑誌に写真が載っているんじゃないかと思うくらいだった。
「ちょっとちょっとちょっと、何見つめ合っちゃってるんですか~?」
じっくりと彼を観察、もとい鑑賞していれば見慣れた顔が視線を遮るように割って入ってきた。まるで彼を私の視線から庇うように立ちふさがる白瀬さんの表情は、拗ねたようにむくれている。
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