無題:土産「ああ、君か」
その姿は昨日まで見せていた凛々しく清廉なものとは正反対だった。髪の毛はぼさぼさで顔が赤い。簡素な寝間着を纏った背はひどく丸まっていて、立っているのも億劫だと態度で示している。その呼吸からは強い酒精とほのかな薬草のにおいがした。
「突然すまない。城で戦勝記念の品が配られたのだが、生ものだからすぐに食べろと言われた。軍師殿は既にいなかったから、俺が届けに来た」
俺が抱えている包みにちらと半開きの目を向けて、軍師殿は一度頷く。玄関扉の開きを広げて、俺を中へと促した。
「悪いね。この通り一晩中飲んだくれていてちょうど寝るところだったんだ。保管庫……冷蔵室がある。そこに入れておいてくれないか――数日中には通いの使用人が来る。それまでは持つだろう」
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