RE2君なんだけど、コ24「seamless」のボツ文
最後の一文を使いたかったけど、どうも同じことを何度も書いてしまうので
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オレは、昨日笑ってじゃあなと言葉をかわした相手が明日には冷たくなっているような街で、次は自分だと毎日思いながら育った。
BGに攫われた後だって似たようなものだ。
短いコードナンバーで呼ばれ、言葉を交わしたこともないお仲間が弾丸に手足をもがれ爆薬に吹き飛ばされるところを何度も目にした。視界に映るこの真っ青な空を、真っ青な海を、二度と明けぬ闇で覆い隠されるのは次の瞬間には自分かもしれない。
なにひとつ変わらず続く明日なんか相変わらずなかったあの頃。
それは、9人の仲間を得てからだって同じだった。
皆が揃っているということは戦いがすぐ近くまで迫っているということで、いつイワンの警告が頭に割り込んでくるかわからない。
それでも同じ運命の仲間がそばにいて、彼らだけは信じることが出来た、いや、信じなければいけなかった。そんな中でひととき肌を寄せ合うことを許してくれたのがアルベルトで、ただ…オレたちは互いにそうやって、互いを特別なのだと思い込まなければやっていけなかった、という方が正解だろう。
なにもかも違う十人で擬似的な家族のように振る舞って、愛を覚えた気になって、ことあるごとに『オレたちは人間だ』と確認しなければやりきれなかった年月には喜びや幸福も確かにあったが、同じ時間の分だけ焦燥と苦しみも味わった。
本物の家族ってのを持ったことはないが、信頼や安心があったとしても煩わしさが切り離せないのは、本物か偽物かにさほど変わりはないらしい。付き合いが長すぎる分、家族と理解し合えないという現実にぶち当たった時の絶望は、オレをまた一人にさせた。
今度こそ引き返せない孤独な母国の日々で、些細な物音にここが戦場かと神経が錯覚したのは数え切れない。
道行く幸せそうな家族連れ、チャペルから聞こえる誓いの鐘の音、長年連れ添ったのだろう老夫婦が眺める公園の穏やかな日差し、この世界でオレ以外のすべての人が、漫然と続く今日がまた明日も繰り返せると思っているに違いないのに、オレだけは明日、ここに自分が立っているとは信じることが出来なかった。
新型と入れ替えに簡単に処分されていく戦闘兵器を見るたびに、同等に成り下がったオレの足元の脆さを感じた。ダウンタウンで空きっ腹を抱えていた頃より、仲間と過ごした苛烈な戦いの日々よりもだ。
”元ゼロゼロナンバー”は母国の所有物として立派なステータスではあったが、それを維持しなくちゃならないオレはサイボーグとして世界の最新鋭の技術を受け入れて、与えられた任務のことだけで思考を満たし、大事だったはずの誰かのことを思い出すこともやめた。いつだったか『あんなふうにだけはならなくて良かった』と思ったはずの”心を捨てたサイボーグ”になろうとしていた。もしかしたらこの人生は、BGに予定通り使われたのとなんら変わりがないんじゃないかなんて思ったこともある。
けれどこれはオレが選んだ道で、だからずっと、自分の信念を曲げずに生きてきたつもりだった。
ま…最後には、自分はただ温存されたトカゲのしっぽだったって知ったわけだが。
その瞬間に、掴みたいと思ったものも、掴めたものも、結局…一度は捨てたつもりの仲間だ。
変わらないものはない。
けれど
今できることを、今を生きることを、オレの瞳にまだ空が映るなら。