かつての話、出会いと この世は理不尽に満ちている。
少数を排斥し、多数のものはそれを無視して笑い、そうして世界が回っていく。
──私は、それを許すことができない。
いつか世界を変えると決めたのは、一体いつだっただろう。産まれた時には母親が死んでいて、父親は母体を"殺した"私を憎んだ。そんな環境だったから、私はきっと、人より世界の認識が遅かっただろうに。
息が詰まる家から逃げ出して、路地裏に潜み続けた。弱者を食らう者を殺すための業だけを磨いて、明日すら怪しい生活をして……。
そんな折、私に手を差し伸べたものがいた。当時のヴィクトリア家政の人間。
私は一度、断ろうと思っていた。詳しく聞けば、「上流階級の方々にサービスを提供する」というものだったから。上流階級なんて、弱者を食い物にする筆頭だろう。
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