卵の中の龍「お前がユーランか? なるほど、婆あによく似てやがる。……その『眼』も、あれとおんなじもんか?」
祖母が亡くなって四十九日を過ぎ、家族が遺品整理に重い腰を上げた某日、その初老の男は祖母の家の玄関に現れた。日焼けした肌に白髪のようなシルバーブロンドを後ろに撫でつけ、着古したダンガリーシャツに褪せたジーンズ、背負ったバックパックは随分と年代物だ。流暢な日本語を操るが、どう見てもアジア人の風貌ではない。馴れ馴れしい笑顔を浮かべて靴を脱ぎ、家にあがろうとする男を葉佩は咄嗟に制した。
「待ってください、……祖母のご友人ですか? それか、うちの親に用なら、まだ着いてないですけど」
「なあに、お前に用さ。ユーラン、スリッパあるか?」
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