ただいまと笑顔と 帰ってくるなり、あいつは言葉もなく姫さんを抱きしめた。
熱い抱擁というよりは、子どもが帰ってきて母親に甘えるように抱きついているように見える。実際は体格のいいダイの腕の中ですっぽりと包み込まれて、姫さんの姿が隠されちゃってるくらいなんだが──
そういえば、あいつは昔から姫さんには甘えるようなところがあったなと思い出す。おれに対しては強がったり意地を張ったりもするけれど、姫さんには素直なんだよな。
テランで記憶を失ったときなんて、それが顕著にあらわれていた。
姫さんもなんかそれに慣れてる感じだな。
なにかあったんだろうな。きっと地上の人間のおれたちには言いにくい、なにかが。
姉さん女房の本領発揮ってところか。姫さんも肝が座っているから、やけに包容力があるように感じる。
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