『幸゛せだなぁ』
カチ…カチ…
『嬉しなぁ』
カチ…カチカチ…
蛙のような形。人よりも何倍も大きな図体をしたその肉体。
その身体を支える手足とは別に存在する腰部、頭部から生えている虫の脚らしきものは、さながら其奴には触覚のようなものなのだろうか。
言いようの無い程に気持ちの悪い其れに、唯一の救いがあるとするならば全身が漆黒であり、細部がよく見えないことだろうか。
見える場所といえば、頭部の触覚の先についている四角いパーツである。
まるでパズルのピースのように散らばった人間の顔面を、その鬼は持っていた。
カチ…カチ…と音を鳴らして、鬼はパーツを自身の頭部に埋め込んでいく。
目尻、鼻腔、口唇の残りの一部がカチ、カチ、とセットされれば、漆黒に浮かび上がる笑った人の顔が出来上がる。
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