星の海に花を散らして溺れているみたいだ。
ひとつボトルを掴んでは戻し、別のものを引っ張り上げてはラベルを眺めてまた戻す。そうしてずうっとボトルの海を漂っている。
なにをしているんだろう、よりもなにをしたいんだろうが見えやしない。
ひやりとした感触を持て余しながら、ファウストはついにはベッドに倒れ込んだ。
「なんにも知らないんだな」
自嘲は薄暗くどんよりした天井に吸い込まれていく。ちいさな部屋の中は雨が降りそうだった。
『奢ってもらう必要はないよ。普通に一緒に飲もう』
思えば奇妙なほど、レノックスと共に飲んだ記憶が少なかった。革命軍にいたときから彼ははあまり酒を飲まなかったからだ。苦手なのかと訊くと首を振り、ならば弱いのかと問えばそんなには、と。
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