暑い夏真夏の日差しが容赦なく照りつけている。
外ではセミの鳴き声が五月蝿いほどに響いている ほんの少し生暖かい風が開け放たれた襖から入ってきて頬を撫でる。

扇風機も回しているのだが、それでも暑いものは暑かった。
そんな中、畳の上にだらしなく寝っ転がっていた
白いタンクトップに短パンという出で立ちでも汗は止めどなく流れてくる。
俺の横には団扇があり、気怠い腕を伸ばし団扇を取るとそれをパタパタと仰いで涼んでいた。

そしてその隣では同じように横になってソーダ味のアイスを食ってる鏡がいた
普段の鏡なら床に寝っ転がるなんて事はしないだろうが…。
今は俺と同じ格好をして暑さに耐えていた、今日は平日だが珍しく休日が合いこうして時間を共に過ごしていた

「ジャパンの夏はどうしてこんなに暑いんだい」
「知らね…」

鏡は俺の隣でごろりと寝返りを打ちこちらを見つめてきた いつものように整った顔つきをしている、畳の上にばら撒かれた金糸の髪や白い肌が眩しいくらいだった
そんな事を考えながら鏡を見つめていると不意に声をかけられた

「なんだい…そんなに見つめてもコレはあげないよ」

そう言って鏡は手に持っていた棒付きのアイスを見せつけるように口にくわえて見せた

「くれねえのか？」

俺はそう言いながら起き上がると鏡の方へ近づいていった すると鏡は口元だけで笑い、また寝返りを打って背を向けた その仕草が妙に色っぽく感じてしまう
思わずそんな鏡を後ろから抱きしめた

「ちょっ、…暑いんだが、離れたまえ！」

鏡は嫌そうな声を上げているが抵抗らしい抵抗はなかった そのまましばらく抱きついていると諦めたのか大人しくなっていた 首筋に顔をうずめると石鹸のような匂いの中に僅かに香水の香りがした それは甘い誘惑のようで頭がくらくらしてくる

「あちぃ…」

我ながら情けない声だと思いながらも離れられなかった

「暑いのなら離れたらいいだろう……」

呆れ気味の声を聞きながら、より強く抱きしめると鏡は慌てた声を上げる

「あっ、アイスが溶けるだろう。1回その腕を離せ！」

棒付きアイスを持つ鏡の手を見ると暑さのせいか既に溶け始めていた、それを横目に見つつ再び首筋に顔を埋める、すると今度は焦ったような声で話しかけられる
そんな様子を楽しみながら、そっと舌先で舐め上げると小さく体が震える 鏡は何かを言いかけて口を噤む

そうしている間にもアイスは溶け、ぽた、と音を立てて畳の上に落ち染みを作っていく。

「あ〜はずれか…」

棒だけになったアイスを見て残念そうに呟くと腕の中で体を反転させた鏡がこっちを振り向いた 少し潤んだ瞳で睨んでくる姿はとても可愛らしく見えた
ゆっくりと唇を近づけていくと目を閉じたので、そのまま重ねる。
アイスを食べた直後なのかまだひんやりと冷たい感触が心地良い 角度を変え何度も繰り返しキスをする。
暫くして名残惜しげにゆっくり離れる、そして鏡の目を見つめる、そこには熱を帯びた視線があった。

「暑いんじゃなかったのか」

揶揄う様に言うと恥ずかしくなったのかふいっと顔を逸らされる、その姿がとても愛おしかった。

俺は我慢できずに両手で顔を此方に向けさせ再び口づけをした。
触れるだけの軽いものだったがそれだけで満足だった。

「鏡と過ごす夏も悪くないな」
「…ワタシもだよ」

お互いに照れ臭くて笑って誤魔化した、夏の日差しは相変わらず暑い、天井からぶら下がっている風鈴がチリンと鳴った。