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    KiyuKi03636

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    せななるワンドロ 第8回

    お題4つ(トパーズ/大切で好きなモノ/担当カラー(ブルー)/プレゼント)全部詰めしてみたつもり。

    泉バースデー記念回!!なのに大遅刻!!
    泉ほんとにごめんなさい!!
    改めてお誕生日おめでとうでした!!!

    いつも通り捏造いっぱいです。

    今も昔も未来もずっと。 俺の好きな色で、Knightsのユニットカラーでもある青色と、俺のメンバーカラーである水色。2色のペンライトが、モニター画面を埋め尽くしていた。
     BGMとして流れるのは、この日のためにれおくんが書き下ろしてくれた曲で、それをピアノで演奏してくれたのはくまくんとかさくん。今日仕事で来れない代わりに、と3人がプレゼントしてくれたものだ。
     お姫様たちはBGMと共に流れる厳選映像とやらを楽しんでくれているらしい。たまに溢れる歓声がその証拠だ。
    「い・ず・み・ちゃん♪」
     唯一メンバーでゲスト出演してくれるなるくんが控え室に顔を出した。
    「もう少しで始まるわね」
     そう言って近づいてくるなるくんの視線が、俺の頭の先から爪先までを一瞬で駆け抜けたのを俺は見逃さなかった。
     俺たちの間でいつのまにか定着していた、いわゆるルーティン。撮影やライブなどの仕事やプライベートなど問わず、一緒に行動するときに準備ができた時点で互いを確認する。相手が満足したのが分かったら、それが俺たちの本当に準備が整った合図だ。
     満足そうに笑ったなるくんを見て、今日の俺も世界でいちばんだと、自然と口角が上がる。なるくんに言えば「アタシがいちばんよ」と返されたけど、誕生日ですら譲ってくれないその生意気さが心地よかった。
    「泉ちゃん」
     静かに名前を呼ばれて手を引かれ、ソファに二人して沈み込む。特に何を話すでもなくさっきまでひとりで眺めていたモニターを一緒に見ていた。と思ったら、なるくんの視線が痛いほど横顔に突き刺さってきた。
     あえて視線を合わせることはせず、モニターに映る青の海を目に焼き付けながらゆっくりと口を開く。
    「あっちにはさ、俺の誕生日を知ってるやつなんて一握りもいないんだよ。誕生日に合わせて帰ってこれるくらいには、仕事もないし。でも、こっちじゃ、こうやってみんな俺のことを待ってくれてる。俺の誕生日を祝うために何十っていう倍率の抽選を勝ち抜いて、俺のために自分の時間を注ぎ込んでくれる」
     世界に出るまでももちろん感謝はしていたし、ずっとお姫様たちがKnights瀬名泉にとって何よりも大切な存在であることは変わらない。でも、世界へ出て帰ってくるたびにその存在の有り難さをより強く感じるようになった。
    「全部泉ちゃんの努力の成果よね」
     なるくんはそう言って、俺の手を握ってくれた。肩に頭が乗せられて、柔らかな髪が頬を撫でる。
    「ありがとう」
     改めて言葉にされると照れ臭くて、そう口にするのが精一杯だった。
    「あ、そうだ。はい、これ」
    「なぁに?」
    「何って、もちろんプレゼントよ」
     ガサゴソと上着のポケットからリボンの結ばれた黒のボックスを取り出し、手のひらに乗せたなるくんからそっと受け取る。
    「開けていい?」
    「もちろん」
     箱から出てきたのは、細いシルバーのチェーンに水色のストーンが嵌め込まれたブレスレットだった。
    「もしかして、なるくんとお揃い?」
    「さすが泉ちゃん。気づいてくれると思ってたのよ♪」
     そう言うなるくんの左手首には、ゴールドのチェーンに水色の石がついたブレスレットが輝いていた。
    「石も一緒?」
    「ううん。泉ちゃんのはブルートパーズで、アタシのはアクアマリン。それぞれの誕生石にしてみたの」
    「珍しいね、色までお揃いって」
     そこでふと思った。なるくんは俺の色を持っている。なのに——
    「俺には、なるくんの色くれないの?」
     するとなぜか、なるくんは眉を八の字にして困ったような悲しそうな表情になってしまった。
    「え、ごめん……別にいじわる言いたかったわけじゃ」
    「実はね、それアタシからのプレゼントだけどアタシからじゃないの」
    「ん? どういうこと?」
    「雑誌の特集をね、読んだのよ」
     雑誌の特集と言われて、思い当たるものはいくつかあった。けれど、なるくんの言葉と上手く繋がらずに空振るばかりで、答えは出そうにない。
    「……飴玉なのね」
     小さく溢れたその言葉に、パッと頭の中でとあるインタビューの記憶が蘇った。
     確かほんの数日前に発売された雑誌で『今までもらった中で一番思い出に残っているプレゼント』について答えた。誕生日近くに発売するからって理由だった気がするけれど、事前の資料には無かったその質問に俺はすぐ答えられなかった。
     もちろん、今までプレゼントをもらったことがないわけじゃない。アイドルになってからはファンの子たちからたくさんプレゼントを貰った。それらは物だったり、言葉だったり色々だけど、どれも大切なものだ。けれど、そういうのを期待した質問じゃないのはインタビューの流れから分かっていた。では他は、と言われれば毎年両親からは誕生日やイベントなど、ことあるごとにプレゼントをもらった。それは嬉しかったし感謝もしているけど、強く思い出に残っているかと言われればそうではない。だいたい中身が両親好みに俺を着飾るための服や小物だったりで、俺の本当に欲しいものではなかったからかもしれない。
     そんなふうに過去を振り返っていると、一つの笑顔を思い出した。
    『お兄ちゃん、お誕生日おめでとう♪』
     誰から言われるどんな祝いの言葉よりも、誰からもらうどんなプレゼントよりも嬉しかったあの笑顔。
     それと共に差し出された一粒の飴玉は、俺があげたお菓子のうちの1つだったけど。それでも、俺には宝石くらい輝いて見えた。
     ゆうくん。俺の大事な弟。
     あの時の俺が何よりも大切にしたくて、何よりも手に入れたかった子。
    「インタビューの中で泉ちゃんは『小さいころ大好きだった子』としか言っていなかったけど、あれ読んですぐに真ちゃんのことだって分かった」
     あえて濁して答えたのは、ゆうくんがそのことを覚えているか分からなかったから。覚えていたとして、俺の記憶と違うことがもし万が一あってそれが発覚したときに俺は耐えられる気がしなかったから。記憶は、美しいままでとっておきたかった。
     そんな俺に、「泉ちゃんがどんな顔して答えてるかまで簡単に想像ついちゃった」と笑うなるくんの顔は寂しそうで、心臓の辺りがキュッと痛くなる。
    「いつだったか泉ちゃん、『ゆうくんの代わりはいないけど、なるくんの代わりもいない』って言ってくれたでしょ」
     あの時のことは未だ鮮明に覚えている。まだ一年しか経っていないのが驚きなほど怒涛の日々を歩んで来たけれど、記憶の鮮明さがいつも時間の流れを俺に教えてくれた。
    「すごく嬉しかったし、言いたいことも分かってるんだけど、でも……泉ちゃんが昔の記憶を辿ったとき、思い出すのはいつも真ちゃんなんだなァって」
     そう言ったなるくんは、一度俺の手をギュッと握り直してからブレスレットを俺の手首につけてくれた。
    「だからね、プレゼントすることにしたの。小さなアタシから、小さな泉ちゃんへ」
     そこでようやく合点がいった。
     俺の容姿を容易く連想させるだろう色の組み合わせ。そして、あの頃の俺がしていたネックレスとどこか似たデザイン。
     もちろん幼い頃のなるくんに、自分を連想する色を俺に贈りたいなんて発想はないだろうだろう。お揃いにさせたのは、きっと今のなるくんが抱いた嫉妬や独占欲。
     常日頃から美しくないからあまり見せたくないと言うなるくんのことだ、「幼い頃できなかったことを今やってみる」という美しく微笑ましい皮を被ることでそれを隠したかったのかもしれない。かわいいやつ。でも同じくらい、気に食わない。
    「なるくんはさぁ、俺の思い出になりたいの? それとも、今の俺の隣にいたいの?」
     ブレスレットに視線が刺さったまま、なるくんが硬直した。なるくんの気持ちが分からないわけじゃない。むしろ、すごく分かる。
    「俺もさ、たまに思うよ。なるくんの中にずっと留まり続けるあいつに嫉妬したりする。でもさぁ……」
     今年の七夕祭に後から駆けつけた俺を待っていたなるくんの顔を見た時、改めて強く思ったことがあった。
    「俺は過去のやつにはやりたくない。思い出の中じゃなくて、なるくんの隣で今を一緒に生きていきたい。俺の隣に今いて欲しいと思うのはなるくんなんだけど……なるくんは違うの?」
     わざとイジワルな言い方をした。そしたら、パッと顔を上げたなるくんの瞳が強気に光って「そんなわけないじゃない」って。
    「一緒に探すって約束したんだもの」
    「良かった。覚えててくれて」
    「アタシ、記憶力はいいのよ」
    「なるくんが得意なのは暗記でしょ」
     否定の言葉に心から安堵した。「どっちも変わらないわよ」と笑うなるくんを抱きしめて、しばらく堪能してからコツンと額を合わせる。
    「まぁ、プレゼントはありがたく貰っとく。生意気な『なるかみ』から貰えるなんてレアだしねぇ〜。ありがとう」
     ニヤニヤとタチの悪い笑みを隠さずにいれば、「泉ちゃんって、あの頃から変わらずイジワルよね」ってようやくなるくんは笑顔を見せてくれた。
    「昔から優しいの間違いでしょ。なるくんはあの頃からちょ〜生意気」
    「かわいいの間違いでしょ」
    「ん〜かわいいよりは、綺麗だったかな」
    「あら! 褒めてくれるの?」
    「言ったでしょ。俺はあんたを見るたびに自信が揺らいじゃうくらいにはあんたの綺麗さを認めてるの。昔からね」
     本当に昔から見た目だけは良かった。中身は生意気すぎて出会った当初は、なんだコイツ! 嫌い! なんて思ってたけど。
    「ま、今は可愛いとこもあると思うけど——周りに嫉妬してるなるくんは特に、ね」
     耳元で囁けば、頬を真っ赤にして固まってしまった。せっかくだから追い討ちとばかりに額へキスしてから立ち上がる。
    「じゃ、先に行ってるから。呼んだらちゃんと出てきてよねぇ」
     軽く鏡でさっと全身をチェックする。前髪を整えれば、シャラシャラとブレスレットが目の前で揺れた。うん。今日も完璧。
     そのまま足取り軽く控え室を一歩出たところで大事なことを思い出して、後ろへ数歩戻る。真っ赤な頬を両手で押さえソファに倒れ込んでしまっているなるくんへ、ニッコリ微笑みかけて一言。
    「その顔はお姫様たちには見せないでよ。俺のだから」
     再び廊下に出た俺の背中へ投げつけられた「泉ちゃん!!」という叫び声に、すれ違うスタッフがみんな何事かと俺の顔を見てくる。咄嗟に緩む口元を手で隠してみたけれど、多分意味がないだろう。だって表情筋をいつもどうやって動かしていたか、今はちょっと思い出せそうにない。
     ステージ袖まであと数十メートル。ステージに上がるまではあと5分ってところ。
     頑張れ俺。
     こんな顔、お姫様たちには絶対見せられないんだから。
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