涙袋をきらきらにしたい夜もある待ち合わせまであと数十分。彼の性格的にとっくに指定の場所で立っていそうだが約束は約束だからもう少しだけのんびりしていく。
コンビニで買った常温の水を開けて喉を潤し、ついでにかさついた唇にリップクリームを塗る。無香料で色味も何もないものだが塗るだけで不思議と気分が上がるのだ。
駅の連絡通路を歩く最中にあった鏡に自分が映る。リップクリームで艶が出たのだろう、今日は顔色が随分といい。立ち止まって前髪を整えるともっと綺麗にしておきたいという欲が芽生えた。
僅かにべたつく唇を何度か開いて閉じて、それからふらりとドラッグストアに入る。
駅ナカの狭い店だから最低限の品揃えしかない、と思いきやメイク系のものは大概揃っていた。郭嘉とて特別詳しい訳ではない。しかしどれが何処に使うべきものかくらいは把握している。
1451