食事をしましょう「ソウルに来るなら連絡しろと言っていたので連絡しました」
そろそろ頃合いに煮立ってきた鍋をじっとみつめながらファン・シモクは言った。
そっけない物言いももはや馴染みの物なので怒りも動揺もない。言葉の裏にあるのが社交辞令なのかそれともさらに一歩踏み込んだ「一緒に飯でも食いましょう」なのか。大抵の人間はそこを検討したうえで相手に連絡を取るが、この検事にはそういう機微はない。だが、顔も見たくない相手に連絡を取るようなタイプでもないこともそれなりに長くなった付き合いで知っている。ハン・ヨジンはただシンプルに「そうですね」と返事をした。
「こちらにはいつ以来ですか?」
「先月も来たんですが」
黙ったのは、ヨジンが鍋に肉を入れ始めたからだ。一瞬じっと見つめあうがヨジンはそのままぽんぽんとリズミカルに肉を鍋に投入した。まだ早いと言いたげだったが、ヨジンの判断ではGOだ。箸と肉の皿を持っているのはヨジンなので決定権はヨジンにある。ちなみに具材を選定したのもヨジンなので、すべてにおいて圧倒的に自分に指揮権があると確信している。
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