鳩「なあ、チビ、鳩の目ぇ見えてんのかよ」
「ハト……? なんのことどすか?」
うちにだけ京ことばを使わないアイツを、姉さんなんて呼ぶ義理はない。おかあさんもこれには頭を悩ませているが、お客様の前ではきちんとしているし、何よりも花街一の舞の踊り手であるから、こっそり目を瞑っているのが現状だ。うちとしては、きつく咎めてほしいものだが。
「だぁら、簪だよ。その様子じゃ、まだ目ぇ入れてないみてーだな」
「目……」
ああ、思い出した。そうだ、この稲穂かんざしについている白い鳩には、目を描くことが出来るのだった。ご贔屓さんに目を入れてもらうと出世すると言われている。うちの鳩はまだ真っ白だ。
「だっせえの。貸せよ」
「ちょっ」
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