ピアス「そういえば、紫鸞殿はいつもイヤーカフをつけてますね。」
「ん?」
おやつに集中していた紫鸞は、体の弱そうで美しい軍師の言葉に注意を向けた。
貴重な休息の時間、戦場へ出る必要のない紫鸞は、本来なら修羅のような訓練場で鍛錬するつもりだった。しかし、途中で以前救い出し、すでに引退した軍師・郭嘉に呼び止められ、彼の部屋へと連れて行かれた。郭嘉が酒を飲まないように、二人は茶を楽しみながら茶菓子をつまむことにした。
「…大切な人にからもらったものだから。」
紫鸞はそう答えながら、かつて村で過ごした記憶を思い出し、無意識に表情が柔らかくなった。その変化は微細なものだったが、人の心の機微に鋭い軍師の目を逃れることはできなかった。
「外して見せてもらうことはできるかな?」
「うっ、それはちょっと…」
紫鸞の困った表情を見逃さなかった郭嘉は、すぐさま質問を変えた。
「では、直接触れるのはどうかな? それなら紫鸞殿も外さなくて済むし、私もじっくり見ることができる。何しろ私たちは、新たな世界の扉を共に開いた仲間だろう?」
郭嘉は笑顔を浮かべていたが、その言葉には逆らいがたい力があった。紫鸞は少し困惑しつつも、郭嘉の申し出を受け入れることにした。
「……。」
郭嘉はそっと手を伸ばし、紫鸞のイヤーカフを撫でた。細やかな彫刻が施されたその装飾を見つめながら、贈り主が紫鸞をどれほど大切に思っていたのかを思い巡らせた。そして、郭嘉の視線は次第に下へと移り、紫鸞の耳たぶに至ると、そのまま優しくつまんだ。
「……っ! か、郭嘉殿!?」
突然の出来事に驚いた紫鸞は、妙な声を上げた。いや、それは問題ではない。なぜイヤーカフを見るだけだったはずなのに、耳たぶを触る流れになっているのか!?
「紫鸞、君の耳たぶにピアスを開けさせてもらえないかな?」
「……え?」
「そして、私とおそろいのピアスをつけるのはどうだろう?」
――そう、ここにピアスを開けて、私と同じものを身につけるのだ。
こうすれば、あなたは私のものになる。