荀令十里香「荀彧殿。」
「無名殿、こんな時間にお伺いして申し訳ありません。」
荀彧は無名の部屋に入るなり、すぐに一礼し謝罪した。
この深夜に訪れることの無礼は荀彧自身も十分承知していた。手紙では訪問の旨を伝えていたが、公務が多忙を極め、なかなか時間を作ることができなかったため、こんな時間になってしまったのは本意ではなかった。
「気にするな、それより荀彧殿、お体は大丈夫?こんな時間までお仕事して…お食事をとった?厨房に肉まんがある」
「無名殿のお心遣いありがたいですが夕食はすでに済ませましたのでお気持ちだけで嬉しいです。」
無名が部屋を出ようとするのを見て、荀彧は慌てて答え、彼の前に立ちふさがった。
「ところで、無名殿。以前私が言ったことを覚えていますか?」
1144