Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    こもやま

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 92

    こもやま

    ☆quiet follow

    ハッピーホワイトデー

    ##小説

    ベリトが振り返ると、少年が笑顔で小ぶりな包みを差し出してきた。

    「貢ぎ物とは関心じゃねえか」

     少年がこの日のために何日も前から準備をしていたのは知っていたし、贈る相手に自分が含まれていることももちろん想定していた。包みを受け取り中を覗くと、赤と黄色、青と色鮮やかな菓子がみっつ。

    (これは、…フォトンか。なるほど、コイツらしい)

     それぞれに施された異なるデコレーションの細かな凝りようは、期待以上の出来栄えでベリトも驚いた。少年に満足していることを伝えると、早速返礼の品を渡す。少年は驚いた様子で、戸惑いながらも受け取る素振りを見せたが、

    「…」
    「? どうした」

     手を伸ばしかけて、そのまま止めて。琥珀色の大きな瞳にベリトを捉えたまま、意味ありげに微笑んでいる。

    「なんだよ」
    「お礼をくれるベリトの顔はどんなのかなっ、て…」

     言い切らないうちに、少年は吹き出して笑った。少しだけ顔が赤い。

    「恥ずかしがるなら言うんじゃねえよ」
    「ごめん。でも、大満足ってやつかな」
    「そうかよ」

     少年の髪をくしゃくしゃに撫でてやる。
     二人じゃれ合うのはいつものことなのに今日はやけに、心が弾む。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💕❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    k_kuraya

    DONEベレトの眷属にならなかったディミレトの幸せについて考えた、二人の約束についてのお話です。転生を含みます。【約束の果てに 1−1/2】

     澄み渡る青空に白い花が舞うのを、ディミトリはベッドボードに背中を預けながら眺めていた。今年も降雪の季節がやってきた。あの花弁は一枚一枚がとても冷たく、明朝には降り積もってフェルディアを白銀に染めるだろう。
     居室の窓は大きな造りで、ベッドの上からでも外の景色がよく見える。暖炉の中の薪がパチパチと乾いた音を立てており、室内はまどろむような温かさがあった。桟に僅かに積もった雪が室温に温められて溶けていく。
     冬季が長いファーガスでは毎年早い時期からの冬支度に余念がないが、春の訪れを待たずに凍えて死ぬものも、餓えて死ぬものも、今はいない。民には豪雪でも耐え抜く強固で温かい家があり、温暖な季節の蓄えも十分にある。雪が深く積もれば生活の不自由さは享受しなければならないが、それでもかつてのように貧しさゆえの辛酸を舐めることはもうないのだ。
     ディミトリは雪が舞うのをただ静かに見つめている。
     ファーガスは元来、王を戴き女神を信仰する騎士の国である。勤勉で清廉、信心深く辛抱強い国民性は、この雪とともに育まれたように思う。だからだろうか、ディミトリは真っ白な雪を見ると 5258