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    kuro06543

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    kuro06543

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    ペダカロ尻切れトンボ

    結果なんてわかっているのに無理矢理に手を握りどうしたどうしたとからかう声にこの関係が壊れてしまうとわかりつつも言わずにしまっておけるほど利口な鳥ではなかった。
    「カロン、俺の帰る場所に、止まり木になってほしい」と絞り出した言葉は少し躊躇されたあとに「ごめん」というたった三文字で簡単にあっけなく散ってしまった。
    握った手を離して「そっか」という俺はカロンからみてどう写ったんだろう。
    慰めるためにか「お前の止まり木なんてものはないぜ、何処にでもいけるだろ?こーんな小さいところで収まるほど可愛いお子さまじゃないんだから」と両腕を広げ青空の下をけらけらと笑う目の前の盲目の青年は相変わらずどこにもつかみどころはなくつかんだところでするりと抜けてしまう雲のようだとカロンにたいしてペダロは思う。
    空に浮かぶ雲はあんなに柔らかそうでふわふわとした見た目をしているのにつかんでもつかんでも手が湿っていくだけで柔らかな感覚は手のひらに残らない。
    へたと座り込む地面は相変わらず柔らかな感触で太陽の光は暖かくて久し振りにみたカロンは相変わらずで心は色んな跡を傷にされてるのに世界だけはいつものように回ってるのが当たり前なのが捻りもなにもない。
    フラれちゃったなぁと思いながらも相変わらずペダロと呼ぶ声は親しげで友人にたいして呼び掛けているのだと思い知らされキリキリと心臓がねじ切られそうな思いが全身に痛みをつれてくるかのようだ。
    止まり木になってほしいとどれだけ弱々しくすがるように頼んだところでカロンは手に入らないのだろう。
    カロンにとっての俺は可愛い後輩で飛べるくせして着陸が下手な大きな子供としか見られてないのだから。
    カロンの埋まってない目がいつか一対でその目に宿ったらどんな顔をしてお子さま扱いしてくるつもりなのだろうか。と諦めきれるような理由を探してるのにだけれどもどうしても諦めきれない。きしむように胸はいたく引き裂かれたような思いでこんなに辛いのにどうして諦めきれないのか。
    ほしいおもちゃを目の前に駄々をこねているようなものなのだとしたらそれこそ本当にお子さまなのにどうしてくれるんだろう。
    「さ、帰ろうぜ」と駆け寄り手を伸ばすのが優しいだとかなんとなく気まずそうにしてる空いたもう片方の手だとかそういう当たり前の優しさみたいなものがしくしくと胸を痛ませる。
    ものの数分でフラれたのに好きが抑えられない。
    その事で泣けないのも悲しかった。
    cageに帰還するとまたなといってくれるのも悲しい。こんなときに優しくした分のサービス料金がほしいなぁとからかってくれたら少しは救われたのかもしれないがそれをしないのがカロンだから去っていく背中を名残惜しく見つめてしまう。
    振り返ってくれやしないだろうかと思うと振り返ってとさっさと任務にいけよとジェスチャーをしてくるのが当たり前の日常の一コマに紛れ込んでいてつんと鼻の奥に涙の匂いがしてしまう。
    それに「またね」と手を振って送り出す。
    また暫くは見ることも難しくなるんだろう。
    と俺もいかなくちゃと任務を聞きにcのいるクリエイトルームに向かう。その間も振り返ったカロンを思い出してしまっているのを頭を揺さぶって振り払おうと何度も頭をふった。
    「薬をエリア1に送り届けてくだサイ、簡単ないつもの配送と同じ任務デス」と特徴的な口調とにっこりと微笑まれ「はい」と大きく返事する。
    切り替えないと
    暫くは見ないんだし。
    見なくてすむんだから。
    「あれ?でも?なんで?」
    あのエリアは穏やかで草木が生い茂り多くのアドオンが住んでいる。
    そしてガーディアンのヴァルゴさまはアドオンを胎内に受け入れまた新たなアドオンを生む、死と生が繰り返される場所だと教えてもらったような記憶がある。
    とても穏やかな場所だ。
    「少ーし、薬には野暮用というのがあるのデス」とごまかされてしまう。
    「そして、なんといっても移動が単純ではないのが面倒ですからネェ…」
    というのにエリアの宮殿への道の途中はそこらじゅうに生えた巨大な蔦を思い出していた。
    なるほどたしかに移動はなかなか手間だし空からならばいくらか早く動けるのはたしかにそうだ。
    エリアによっては特殊な場所もあるので翼があるというのは様々な面では+だ。 
    着地が壊滅的で乗客全員が助からないほどの被害被るほどのものでも役にはたてる。
    クリエイトルームを出て多くの鳥がいるへやにいるとなぜか息苦しさを感じることがある。
    そうだ、任務を遂行しなくてはいけない。
    薬を呼びに医務室にいくと相変わらず薬は書類とにらめっこをしている。
    そういうのを見ると心のどこかでいいなぁと思う。
    「薬」とその背中に呼び掛けてみると反応はなく三度めの「薬」でやっと振り返る。
    「ペダロ」と振り返った顔からなぜか笑顔が消えたのが不思議だが「cからエリア1へつれていくように言われてる。準備ができたら呼んでくれ」というが薬の表情は険しい。
    詳しいことを聞いていないことがダメだったろうか。
    でも聞いていないことは伝えようがない。「
    …あのぉ」と謝ろうとすると
    「なにかありましたか」と遮られてしまった。
    なにかいわないと
    「エリア1になにがあるのかは聞け「ペダロ、貴方今すごくひどい顔をしてますよ」と被せられペタペタと顔に触れられる。
    そんなにひどい顔をしてるのだろうか小さなライトに眼球を照らされて目が眩む。
    「元気だけが取り柄の貴方がそんな顔をしてるのは珍しいですね。」と微笑んでいるが目が怖い。
    いつもの笑っていない笑顔だ。
    「ひぇ…」覚えてる限りのことではなにも悪いことをしていないが怒らせると怖いし何よりも注射は怖いし薬=注射の図式は出来上がっている。
    「なにもいつも笑顔で能天気でいろとはいってませんよ。ペダロ。」と肩を捕まれる。
    「僕たち同じCageの仲間じゃないですか。心配してるのに話してもらえないなんていってもらえないなんてひどいことしませんよね。」
    と見つめられる。
    仲間という言葉に弱いとわかってて使ってるしその顔で何度も断りづらい頼みごとをされてるのに口からでたのは「わかった…」だ。
    臆病な自分が憎い。
    そうしてポツポツとたどたどしい下手な説明に「フラれた…」と薬が唖然としている。
    仲間内で好きになるなんてタブーではないだろうが何処と無く触れづらい話題のトップにはいる話題でさらにフラれたなんて最悪だ。
    しかも相手がカロンというのも薬的にはよろしくなかったらしく頭痛がとこめかみを抑えている。
    「貴方がカロンを好きになるとは思いませんでしたよ。」と吐き出された声にいいたいことはあるが薬だってカロンを知っている。
    「まさかでしたが諦めはついてないですよね」という言葉に曖昧に笑う。
    「とりあえずエリア1へいってから作戦をたてましょう」という宣言に目が泳ぐ。
    いや、カロンのことをまともにみられる気がしないから暫くはなれていたいし手助けされても諦められないからといってもうフラれたのだから終わってしまってる。
    「いや、そこまでしなくてもいいよ」に「諦められるまで手を貸すつもりです」とさらりと手を貸すと決めましたと目が語っている。
    そんなぁ…と俺がいいながらも薬はてきぱきと準備を始めてしまっている。
    「さぁ、いきますよ」と横抱きの姿勢になるのに恥じらいもない薬だがこれはこれで恥ずかしい体制だと思ってしまうんだが考えすぎだろうか。 
    お姫様抱っこってやつだけど。
    言ったところで「この方が少しは安全に着陸すると思いますがね」と言われることなので口を引き締め
    「了解」とだけ答えて共に虚無へと転送される。
    薬に口答えしたら二倍三倍に返ってくる。
    それにうまく返せる頭が足りないのはよくよく承知した上で飲み込むことにした。
    俺は飛ぶ事についてはうまい気がする。
    ほかに比べる相手なんて相棒のイネインとプランクだけだけど。
    両足に力をこめて羽をはばたかせる一回、二回、と回数を重ねると宙へと身体が浮くあとは空気の流れと羽の傾きとをうまく重ねるだけだ。
    浮遊感に気持ちが高まる。
    と一気に高度をあげて雲を突き抜ける
    やっぱり空はいい。
    こんなにも広大で遮るものがない。
    「ペダロ、張り切りすぎですよ」といいながらも薬もどこか楽しげにしているのは気のせいではないだろう。
    どこまでも果てがない空は美しい。
    そしてあまりにも自分と言う存在はちっぽけだ。
    ここまで上がれば簡単に宮殿へ向かうことができるがエリア1のどことまで指定されていないのでとりあえず入り口へ下ろすことにする。
    此処が一番の難題で問題点なんだけど。
    「さて、あのクレジットジャンキーを無理矢理にでもあなたとつがわせて見せます」
    「ええ!!なんで!!そこまでしなくていい!!」
    とあまりの直球に首を降る。
    「そんなのダメだから!そんなので好きになってほしくない!!」とダメだと顔の前に手でバッテンを作り拒否する。
    カロンにも考えがあるだろうしそれを曲げるのは違う。俺だって好きだって思った気持ちを曲げられるのは違うし嫌だなと思う。
    「諦めきれないけど…カロンのことそんな風に自分の好きにするのは違うから…」と頭を降る。
    自分の物にじゃなくてただ側にいたいと強く願ってしまっただけなのにそのカロンを変えてしまうのは違う。
    それにたいして少し戸惑ったような表情を見せてから「まぁ、貴方が言うなら仕方ないですね」とあまりにあっけなく引き下がられるのに口がポカンとあく。
    そして恐る恐る顔色を覗くようにして「薬はそれで良いの?」と間抜けなことを聞いてしまう。
    「…こちらとしてはまぁ、言いたいことはありますしカロンには何かしら繋ぎ止めるものはあって良いと思いますよ。それを貴方が断るのなら仕方ないと思いますし僕もせっかちだったとは思います。簡単に言えばその気がないのならする必要はない…ということですよ」とにっこりと微笑み。
    「どうしたいかは本人たちが決めることですし。そのうちにわかることもあるでしょう。」とデコピンされた。
    「うん」と俺の不安そうに震える声を聞くと「まだまだ働いてもらいますから覚悟してくださいね」と先へと進む薬を追いかける。
    薬が手を貸してくれるのは思わなかった。
    それに結びつけようとするのもなんだか不思議な話だ。
    そしてカロンを思うと身体が太陽の側にいるような心地だ。
    熱くて眩しくてどこまでも届かないところにある気がする。
    雲も太陽も触れたらどちらかが壊れてしまう。
    俺はカロンのことをちゃんと知らない。
    そのつかめない表情の下を自分が知りたかった。
    でもできない。
    拒まれたのなら拒まれたと諦められたら良いのに当たり前の顔をして居座っているからどうしてもその当たり前の一部が変わってしまっても良いからつかめないと思ってるそのに触れたかった。
    それが諦めきれない。自分勝手なわがままだ。
    だから子供のように扱われるのに。
    いけないと手を開いて閉じてと簡単な動作を繰り返す。
    いけない、本当にいけない。
    薬の手伝いをしなくちゃ。
    薬は元からcには回診を頼まれていたそうだ。
    いつもの順繰りに巡っていき大きな支障はないそうだ。
    飛ぶのはいくらでも構わないが顔面着地数回で顔がヒリヒリとする。
    だけれども自分の身体が頑丈でよかった。着陸で自分が死ぬなんて面白いことをする身のはった芸はしたところできっとたの面白くはない。
    「さて送って貰いますかね」と当然のように横抱きに収まる薬を送り届けて任務は完了した。
    任務があると少しは気が楽だがふとしたときにカロンを思い出す自分の執着に苦笑してしまう。
    ふらふらと虚無を飛ぶことにする。
    始まりの地だ。
    きっと虚無の卵から全てが生まれた。
    自分も他の打者と同じようにきっと同一の大きな卵から生まれた鳥であるのに明らかに姿かたちはことなっている自分を誰もとがめたり異質だとは言わないが化け物のようだとよく思う。
    役に立てるということで誤魔化していても俺はきっとみんなとははぐれてしまった化け物に違いない。
    あぁ、いいなぁ、俺も薬のようだったら助けられるのに。
    こうして滑空しているのがさらに自分を他の鳥とは違う。
    人の形に似せた何がだとよく思わされるのが辛いところだ。
    本物のバッターにもなれないし怪物にもなりきれない半端さがくるしい。
    カロンはそういうときになぜか隣にいて力強く背中を叩きながら「俺だってみんなだって欠けてるのにお前くらい色々くっついてるのも中々ないだろ」とケタケタと笑う。
    「後さ、俺にはお前のことちゃんと見えてないと思ってるのか知れないけどその分お前がからかいやすいほど純粋で騙されやすい子供みたいな性格してるってのはバレてるんだから。怪物なんてこと言わなくったっていい。そもそもバッターの時点で俺も他のバッターも怪物かもしれないだろ?それに俺のかわいい後輩をそんな化け物になんてさせないっての」と頭をこづかれるのを思い出す。
    カロンが俺を化け物にしない。








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