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    iz_mife

    @iz_mife

    だいたい今はゴーティエ兄弟。
    兄上に夢見がち。練習とかラクガキ多めです。
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    iz_mife

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    【恋文💌をうっかりもらったアッシュくんがシルヴァンに相談に来るお話。付き合ってないのに嫉妬しまくりな色男書いて楽しかったです🤗

    前半はシリアス気味のシルアシュ
    後半はギャグ調の青獅子♡アッシュ】

    「あっあの……多分……ですけど、こっ恋文をもらってしまったみたいでっ君……に相談したくってですね……その、時間今いいですか?」
    講義が終わるなり自分のところに駆けてきて真っ赤な顔で、上目遣いに尋ねてくる青獅子の最年少の様子に皆の兄貴分を自負するシルヴァンは頬をこれ以上無いほど緩ませた。
    (うん可愛い、やっぱめっっちゃくちゃ可愛いなコイツ。やっぱ付き合おうな俺たち、それで卒業したら実家の近くの教会で結婚しよう、よし決めた!)

    シルヴァンは自らの頭の中で鳴り響く教会の鐘の音色を噛み締めた後、わざとらしい程の大声で目の前の少年をからかう。


    「へー恋文!? やるじゃんかアッシュ~お前も隅に置けないな! えっ誰? 俺の知ってる子かな? おいっ可愛い子だといいなぁ!」
    「ちょっ…シルヴァン! 声が大きいですって」
    講義が終わり、殆どの生徒はつかの間の自由時間を有意義に過ごすため我先にと教室を出ているが、まだ数名は残っているのだ。アッシュが騒ぐ自分を止めようと近づいてきたのを幸いにと、シルヴァンはその長身を折り曲げて、はしゃいだ振りをしてアッシュの小さい身体ごと抱きしめてしまう。
    煩い、と言わんばかりに端の席に座っていたフェリクスがこちらを睨んできたが、会話内容が気になったのか耳だけこちらに意識を向けているのは見てすぐ分かった。
    (アイツも気になってるんなら近くに来りゃいいのによ、素直じゃねーのな)

    周りを気にしながらもシルヴァンの腕の中に収まったまま、頬を染めたアッシュがボソボソと話し始める。
    「そっそんなのは分かりませんよ……朝教室に来たら、席に置いてあって……読んでみたら……なんかそんな感じに思えてしまって……」
    手に持っているのは上質な羊皮紙に、洒落た飾り紐。びっしりと書かれた文章からも恋文というのはアッシュの勘違いでは無いのだろう。
    と、なるとますます送り主が気になってくる。
    「ふーん、誰なんだ?生徒?それとも教団の関係者か?」
    ここは三学級全体の生徒数も多いが騎士団、教会の関係者までも含めると相当な人数になる。元々知り合いが多い筈の自分ですら全員を把握は出来ていないのだ。

    「えぇっと……隣のクラス…で、知らない方です……話したことも無いと思うけど、どうなんだろ…手紙の内容を見るとあったのかも……しれないですね」
    「へーモテるじゃんアッシュ」
    「揶揄わないでくださいよ…本当、こういうの苦手なんですからっ」
    一方的に好かれてるって事ならば、自分が心配しているようなことでは無さそうだと安堵の息を吐く。しかしアッシュに目をつけるなんて、なかなかにお眼鏡が高い。きっと純粋な可愛い感じの女の子なんだろうな……と思えば、自分の立場はさて置いて何だか嬉しくなってしまうのも事実だ。

    「で? 俺に相談に来たって事は女の子との付き合い方か?……それとも断り方?」
    少しだけ声に緊張が走ったのが自分でも分かった。速く鳴り始めた心臓の音がアッシュに気付かれないよう、不自然にならないように笑いながらようやく身体を離す。
    羊皮紙をぎゅっと握ったアッシュを見おろせば入学から数節が経ち、ほんの少し逞しくなった気はするが誰が見ても「可愛らしい」という評価をするであろう、まだあどけなさが残る小柄な少年が見える。
    本当ならすぐにでも自分のものにしてやりたいが、幼いこの子供に思いの全てを伝えるには早すぎるとシルヴァンもさすがに理解はしている。
    少なくともこの士官学校に居る間は学級の仲の良い友人として、頼りになる兄貴分として慕われていたいと願うだけなのだ。そしてその為の努力を惜しむつもりは無い。

    だから、もしアッシュがこの貴重な学生時代に女の子と付き合いたい、と言うならば少しぐらいその応援をしてやっても良いと本気でシルヴァンは考えてはいるのだ。
    勿論それなりに自分は精神的な苦痛は味わうだろうが、騎士を夢見るアッシュの事を思えば、女性と交際する事は彼の今後の人生に置いて良い経験になるはずだ…と。

    (あー、俺ってば本当良い男……でも絶対に一線は越えさせないように監視はしとかねぇとな)
    いざとなったら、自分がアッシュの未来の彼女を寝取るぐらいはやらねばなるまい……と最低に下世話な事を考えていると、そんなこともつゆ知らず少し遠慮した声が耳に届く。

    「あの……えっとですね…シルヴァン違うんです」
    「ん、どうした? 何が違うってんだ?」
    アッシュが慕ってくれる「青獅子の兄貴分」を崩さないように、頭の後ろで腕を組んで軽薄に笑いながら彼の返事を待つが、そこで自分の首筋から脇から出た汗が背中を伝うのにぎょっとする。思っていた以上に動揺していたのだと今さらながら気付いてしまった。

    そして次のアッシュの言葉を聞いてシルヴァンの表情からは、完全に笑顔が抜け落ちる。
    「いえ、それが男の人……貴族の方からみたいなんですけど、僕どうやって断ればいいのか分からなくて」
    「……………」
    「手紙の内容が、将来的な事まで書いてあって……気持ちは嬉しいんですけど僕にそんな器量はないですし……でも、せっかくの申し出を失礼が無いようにどう言えばいいのか困ってしまってですね…あの……シルヴァン?」




    ( あぁっ 駄目だ 声が出ない )


    「シルヴァン…どうしたんですか?」



    「っあ……」
    ようやく喉の奥から出てきた声は自分でも驚くほど低かった。
    「あのさ……ねぇ、アッシュさ…」
    「はっ…はい?」
    少しだけアッシュが怯えたように後ろに下がるのが分かったが、手を灰色の柔らかい髪に置いて撫でてやれば、ほっとしたように安堵する少年の表情にようやく溜飲が下がってくる。
    どこぞの男よりも自分の方が格上だと、アッシュに信頼されているのだと顔も知らない相手に大声で宣言してやりたい。お前なんかに渡していいものじゃないと思いつく限りの罵倒の言葉が頭の中で刃になって飛び交っているのが分かる。


    もう一度満面の笑顔を作り、優しく優しくアッシュに尋ねてみる。

    「……んー…で? その貴族さぁ、一体どこのどいつ? 家名は? その家は国から勲章もらってるのか? そいつはさ……俺みたいに紋章、持ってるってのか?」

    「えっ…?」

    何よりも嫌いな筈の渦巻く嫉妬の感情。
    忌み嫌っているはずの貴族社会の紋章による優劣の考え方。

    こんな自然に、こんなに簡単に、自分の中から湧き出てくるだなんて思いもしなかった。

    こんな風に自分がなってしまうだなんて、俺は知らなかったんだ。



    【終】





    ↓こっからおまけギャグパートです。みんなうるさいです。

    嫌だ、無理です、ひどい、やめて!!と何回も言ったのに二人がかりで奪いに来られれば、非力なアッシュは渡すしかなかった。
    どうしてゴーティエとフラルダリウスの嫡子たちがこんなに大騒ぎするのか分からない……とアッシュは殆ど半泣きで机に突っ伏していた。

    先程から自分への恋文をフェリクスが朗読しているのだから恥ずかしすぎて死にそうになる。
    自分の事を褒めちぎっている文章を、自分などより遙かに器量の良い男の二人が大真面目に顔をつきあわせて読んでいるのだ。端から見るとその様子は異様としか思えない。
    特にシルヴァンの態度が先程からおかしいのだ。眉間にしわを寄せて舌打ちはするし、教室の机を意味なく蹴り続ける。しかもそれをフェリクスすら注意しないこの状況。


    (えっ…めちゃくちゃこわい……)

    シルヴァン=ジョゼ=ゴーティエという貴族はいつだって自分には優しいのだ。今思うとどれだけ失礼な物言いをしても、喧嘩をしてもシルヴァンがアッシュの前で感情をぶつけるなんて事は絶対に無かった。
    なのに先程、告白の返事をしにいくと告げたら烈火の如く怒られた。あのいつもの優しい笑顔も、柔らかく甘い声も無くひたすらに一方的に怒鳴られて流石にアッシュも3歳年上の大人の男性の本気の罵声のあまりの恐ろしさに涙腺が緩んだ。

    挙げ句の果てには「俺が断りに行く!」と言われ、そのまま恋文を奪われそうになったので逃げようとしたが、何故か助けに来てくれたと思ったフェリクスまでもが加勢にまわって呆気なく奪われた手紙は、結局二人の手の中だ。

    「ふむ……」
    大きめの羊皮紙二枚にびっしり書かれた文章をじっくり読んだ後にフェリクスが顔をあげて冷静に言う。
    「……いや、これは完全にお前の体目当てだろ……何だ後半のあたりは……お前の高めの声がいいから毎朝聞きたいです♡とか、飯が美味いから必ずその日は青獅子のクラスとメニューを交換させてもらってます♡とか……訓練服がいいとか……変態……? だな」
    「……言わないで下さいぃ! 僕だって恥ずかしいんですからっなんかやっぱり後半変ですよね!? 分かってはいましたけどっ……」
    「……アッシュが料理当番の時、他のクラスと交換してるやつ今度見かけたら殴るわ……いや、マジで潰すわ……」
    「……潰す? シルヴァン、君は何処を潰すつもりですか!」
    「はぁー!? あのなぁいいかアッシュ! 男ってのは……体目当てでしか付き合ってくださいっなーんて言わねぇんだよ!」
    「え!?……そっそんなことあるわけないですよね?」
    助けを求めフェリクスの方を見るがそっぽを向かれてしまう。
    「いや…俺は女と付き合ったこと無いから分からんがな、でもコイツが言うならそうなんだろ?」
    「もー! いつもは色情魔とか言ってるのになんで今日はそんなにこの人に従順なんですか、フェリクスは…」
    目を赤くして目尻を乱暴に擦るアッシュの頭をぽんぽんと撫でて、フェリクスが聞いてくる。

    「な、俺が断ってくるか?この変態男」
    「しっ失礼ですよ流石に。嫌です女の子じゃないんですから! 自分で行きますから大丈夫です……って剣に手を置くのやめて下さいよ」
    「んーじゃあ俺が付いてってやるよ、ついでに紋章なしのその男を潰してきてやるからさ♪」
    「一人で行けますって! だから剣を抜こうとしないでくださいって……もう一体どこを潰すつもりなんですかっ」
    「いや、でもさぁ俺もフェリクスも嫌だってお前がワガママを言うなら、殿下にこれ今から持っていくからな」
    「嫌です! えっ何でここでディミトリ様を巻き込むんですか?」
    もうアッシュはずっと泣いている。こんななら恋文なんて貰いたくなかった。好意なんて持たれたくは無かったとしゃくりはじめるが、シルヴァンもフェリクスも一歩も引かない。

    「だってさ、こいつ王国貴族じゃないのにガスパール領の事まで書いてあるし……」
    「立派な領土侵略思想者だな。アッシュを手籠めにしようとしてるのも王国への攻撃と見なすことも出来る。第一お前は一応ガスパール領の相続権も持ってるからなそれ狙いと見なすこともできる」
    「……うそですよねっ…?」
    「いや、これはマジな話だって。だから殿下はこの手紙があれば正式にこの貴族に申し開きを求められる」
    「俺たちが嫌なら猪にこの手紙を渡すぞ?何なら親父殿に送ってもいいからな。いや、その前に大司教殿か?」
    「まぁ俺だったら、この場で大人しく俺達に任せた方が穏便だと思うぜーだって俺とフェリクスなんてなぁ? まだ、気楽な嫡子だしなー」
    笑顔で脅迫をしてくる悪魔とはこんな顔なんだろうかと、アッシュはいい加減涙も引っ込めて青ざめる。国の問題なんかになってはたまらない。王国も教会もこれ以上話が大きくなるだなんて、居たたまれなくて死にたくなってしまう。

    アッシュはようやく重い口を開く。申し訳なさで胸が痛くなるが、しょうがないのだと自己弁護をしてそれをやり過ごす。

    「……お二人とも……じゃあ僕、告白の返事に行くので、付いてきて貰っても良いですか?」

    「よーし!じゃあ三人で行こうぜ!」
    「ふん! 腕が鳴るなっ」
    「だから、剣を構えないで下さいって!! シルヴァンも何で魔道の本を持っていこうとしてるんですか! 燃やさないで下さいよっ?」


    後日、青獅子のクラスでの不穏な噂があるとディミトリの耳に入ったのは、本格的に暑くなり始めた節の始め。

    「まぁウチの末っ子は可愛いからな、しょうがないな♪」
    すっかり尾びれ背びれが付きまくった噂話を聞いて手を叩き大笑いをする。

    ファーガスの未来の王の楽しそうな様子にその従者だけは、人知れず溜息をつき、彼の親友のこれからの学園生活の安泰に祷りを捧げるのであった。

    【おまけ終】
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