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    freeuramochi

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    わしおんFes弍の作品です。
    お茶請け程度によろしければ。

    『報告はお早めに』✴︎審神者が出てきます。✴︎陸奥守初期刀本丸設定


    「おんしを好いちゅう。わしと付き合いとうせ」
     いつもは冗談も言う陸奥守が、真面目な表情、真っ赤な顔、真剣な声でそんな事をいわれて仕舞えば、冗談かと聞く事も出来ず、かと言って、自分も少なからず特別に思っていたせいで、自分までも真っ赤にな
    ってしまった、肥前は、声を出すことはできなかったけど、その表情と小さく頷いたそれが、回答だと正しく伝わったようだ。
     お互い真っ赤なまま、抱き合って、正式にお付き合いが決まったのがつい先日だ。

     
     さて、運良く非番が重なったある日、肥前の目の前には正座をして真面目な難しい顔をした陸奥守が居た。
    「んな顔してどうしたんだよ…」
     同じ部屋でいつもなら鬱陶しいくらいくっついてくる奴のこの表情。何があったのかと身構える。
    「肥前の。おんしと恋仲になれて浮かれておったんじゃが、大事な事をわすれちょった」
    「はぁ?んだよ、大事なことって」
    「主に報告じゃ!」
    「はぁ??」
     
     主に報告・・・・・・。
    「はぁ?!?!言わないといけないことかよ!?」
     この本丸、確かに恋仲の刀らはいる。いるが、あえて報告はしてないはずだ。脇差会で聞いたから間違いない。
    「いや、わしは、ここの初期刀やき…」
     そうなのだ、ここの初期刀はこいつで、ついでにいえば、ここの主は初期刀過激派勢。他の刀と同じとういう訳にはいかないということだ。
     ついでにいえば、そんなこの本丸きっての愛され刀であるこいつの相手が俺であることが、果たして、認めてもらえるのだろうか。
     考えはじめたら思考が悪い方に傾き、つい黙ってしまう。それを どう考えたかわからないが、目の前の陸奥守は立ちあがり
    「っし、遅くなれば行きにくくなるき、今から行くぜよ」 
     そう言って立ち上がる陸奥守。本来なら、それに続いて立ち上がるべきだが、立ち上がることなどできない。立ち上がったらそのまま審神者の部屋に行かねばならないのである。
     自分の方をじっと見られているが、顔も上げられない。
    「肥前?」
     不思議そうに訪ねてくるその声に返す返事など決まっている。
    「行きたくねえ」
    「へ?」
    「行きたくねぇっつってんだ」
     駄々を捏ねている自覚はある。だが、行きたくないものは行きたくない。目の前のこいつの気持ちを否定するつもりも、自分の気持ちを否定するつもりもない。一度付き合うと決めたから、反故にするつもりもない。
     だが、今の主である審神者にもし、否定されるような言葉をかけられたら。気を遣ってそんな言葉は出さないかもしれないが、表情は?瞳は?残念ながら、自分は人からの悪意に敏感である。刀としての来歴が変な所で邪魔をするからだ。
    「そうは言うてもなぁ…」
     ポリポリと頭をかいて、苦笑する陸奥守。一度言い出したら、聞かない自分を正しく理解してるからである。
     だが、しかし。目の前の男も正しく同じ性格をしていた。
     ニッコリと笑って、自分の腕を掴み強引に立たせると、目を丸くした自分を抱えて歩き出した。
    「お、おい!陸奥守っ!!!」
     暴れて離せと言いたい所だが、悲しい事に、自分は特の99。相手は極の99。勝てるわけがなかった。
     
     必死の抵抗虚しく、審神者の部屋の前。こう言う時に限って誰とも会わない。逃げ場はなくなった。
    「あるじー。邪魔するぜよー」
     緊張感のない陸奥守の掛け声に「はいよ」とこちらも緊張感のない声で返事をする審神者に、ため息をつきたくなる。自分だけが悲壮感を漂わせてる気がしてならない。
    「お?どうした?お二人さん」
     笑顔で向かい入れてくれて、作業机から目を離し机を挟んだ入り口側の席をすすめてくれる。
    自分が抱えられて、そのまま座らされる事にツッコミを入れて欲しい。切実に。そんな願いは叶えられる事なくスルーをされて、ニコニコしている。
    「で、二振り揃ってどうしたんだい?」
     その言葉に、固い顔をした陸奥守が口を開く。
    「主に報告があって…。肥前のと、恋仲になったき、主にはちゃんと報告せにゃいかんと思いちゅう、きたがやき」
     陸奥守がそう報告した時顔を上げられなかった。審神者の顔を見れなかった。目に入る自分の握りしめた手がジワリと汗をかく。強い敵と対峙した時でもこんな汗をかいたことがないというのに。
     数秒であるだろう一瞬の間。自分にとっては、何分にも何時間にも感じるその一呼吸のあと、審神者の声が響く。
    「陸奥守ー!!!!!良かったな!!!!ようやく思いが通じたんだな!!!」
    「…は?」
     どこかの本丸一声のでかい横綱刀と張れる位の声量で、小さな天狗のような平安刀と同じくらいのテンションで言った、目の前の審神者の言葉に、思わず固まってしまう。
     ようやく?思いが通じた??
     どう解釈しても陸奥守が俺を好いていたことを知ってるような言葉だ。
    「そうなんじゃー、本当、主には心配かけたき、ちゃんと言わないといかんと思ってにゃぁ」
    「いやぁ、肥前が顕現して、すぐに付き合うと思ったのに長かったなぁ」
    「うっ、それは、わしが中々踏み切れんかったやき」
    「まぁ、それを見てるのも楽しかったがな。なんだかんだで、まとまってよかったよ」
     そんな固まってる自分を置いて、テンポよく繰り返される1人と一振の会話。
     待ってほしい。知らない話が沢山出てくる。
    「おい、陸奥守」
    「ん?どうした?肥前の?」
     キョトンとしている、陸奥守。可愛いとは思うが今はそれどころではない。
    「お前、主に話ししてたのか?」
    「え?おん。実は…、おんしがここに来る前から、相談乗ってもろてたんじゃ。やき、ちゃんと報告しにゃいかんなぁ、と思てな」
     照れながら、言うその言葉に、自分の中の何かが、ブチリと切れた。
    「っ、おっ前は…!!ちゃんと!!報告しやがれ!!!!」
     先程の審神者の声と変わらない声量が出ていたかもしれない。だが気にするものか。
     目の前のこいつは、解かねばならぬ話がある。

     そこから、続いた肥前の説教は、本日の近侍が部屋を訪ねるまで半刻ほど続いたとか。藪蛇にならないよう審神者はニコニコと聞いていたと言うから、そこは懸命な判断である。


     皆様くれぐれも報告はお早めに。そんな教訓がこの本丸内に伝わるのも後数刻。
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