まえいわい飲食室にて直木三十五とハワード・フィリップス・ラヴクラフトと芥川龍之介は掘りごたつに入っていた。
「あと一時間だよ」
「十二日」
「そんなに俺の誕生日を祝いたいのか」
『祝いたいのだろう』
二月十一日は残り一時間で終わる。
十二日になれば直木の誕生日だ。現れたのは七歳ほどの姿をした『くま』、通称ぷち『くま』である。
「誕生日祝いのためのぶどうジュースを持ってきたぞ」
エドガー・アラン・ポーがぶどうジュースを持ってきた。ぷち『くま』がワイングラスをどこからか出してこたつテーブルの上に置く。
「ぶどうジュースってワインとかじゃなく」
「ナオキは下戸だからな。酒屋がすすめてくれたぞ」
直木が言うとポーが笑う。
『ワイナリーが作ったぶどうジュースだ。あの酒屋。帝国図書館を酒豪図書館と言って……』
「無理。否定、出来ません。図書館。酒。います。飲む人。沢山」
「お酒のチョイスはいいんだけれどもね。こんなのも売っているんだ」
『前祝いにいちごのタルトを作ったぞ。食え』
酒豪図書館と言われても否定が出来ない。
テーブルにはいちごタルトと人数分の皿が並ぶ。
「おう。さっそく」
「直木さんお祝いしに来た」
「前祝いにケーキを持ってきたぞ」
「植村。僕はクッキー」
里見弴や菊池寛、久米正雄も来る。
「にぎやか」
「みんな来たね」
「ナオキだからな」
誕生日まではまだだけれども。
「ありがとな!!」
直木は祝ってくれる者たちにめいいっぱいの礼を言う。