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    秋月蓮華

    @akirenge

    物書きの何かを置きたいなと想う

    当初はR-18の練習を置いてくつもりだったが
    置いていたこともあるが今はログ置き場である
    置いてない奴があったら単に忘れているだけ

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    秋月蓮華

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    ゆめきゅとぽめとどいるときょしのはなし
    会話でダラダラ

    カラフルな毎日【カラフルな毎日】

    「事件が起きたのはお昼前でした。尾崎放哉さんの悲鳴が聞こえたと想って見に行ったワタシたちが見たのは低い位置の壁に突き刺さっていた包丁と放哉さんと司書さんで、
    壺さんを捕まえたポーさんが後から来ました」

    「夢野、それで事件が何が起きたかって大体察せねえ?」

    「察せますよね」

    談話室にて夢野久作は紅茶を入れていた。奥の方に入っていたので近いうちに使い切ってほしいと頼まれたアッサムを入れることにする。
    帝国図書館はあちこちにキッチンスペースがあるが談話室にもあった。ここで夢野はお湯を薬缶で沸かすとティーポットに入れて蒸らす。ソファーには岩野泡鳴が座っていた。
    泡鳴は抱えたポテトチップスの袋から固焼きポテトを取り出すとバリバリと食べていた。賞味期限が近いので安く売っていたのだと話していた。

    「彼はまだ図書館に慣れきっていない」

    「慣れきった慣れきっていない以前に包丁が飛んできて壁に突き刺さったら誰でも怖いだろう。犯人は司書だが」

    コナン・ドイルが一人かけのソファーに座り、紅茶を待っている間に突き刺すように話したのは高浜虚子だ。包丁を投げたのは彼等を転生させた特務司書の少女である。

    「壺さんが司書さんが作った塩キャラメルナッツタルトを食べきってしまい、逃げたところを捕まえようとした司書さんが包丁を投げたのです」

    「アレってどうやってるんだろうな」

    「前に聞いたことがありますが、技術だそうです」

    「技術か」

    それで解決されてもな、と泡鳴が呆れ半分で受け止めているが、これが出来るというのを技術の一言で押し込めてしまったら、解決にもなっていないところはあるが、
    技術としか言いようがないらしい。
    壺さんと呼ばれているのは文豪であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトが抱えている壺のことだ。中にタコのような生き物が入っている。
    文豪は通常、一冊の本を持って転生するのだがラヴクラフトは持っていなくて壺だ。
    どうも壺の中に本が入っているようだが……。
    壺は好奇心旺盛というか食いしん坊なところがある。白キャラメルナッツタルトは特務司書の少女がたまにつくるお菓子だ。
    夢野と話しながら泡鳴は固焼きポテトを食べ続ける。

    「焼いて切り分けようとしたら侵入してきた壺がみんな食べたらしい」

    「猫か」

    「タコでは」

    「あれは何なんだろうな」

    壺にお菓子を食べられて怒った司書が追いかけて捕まえるために包丁を投げたらしい。ここにいる文豪たちはそういうこともあるよねで終わらせてしまえているが、
    包丁が投げられて壁に突き刺さったのを見たら誰だって驚くだろうとはなる。矛盾しているようだが、驚いたことはあるにしろ、今は慣れた。
    しかし包丁は投げてはいけない。
    事件について知っているドイルが話していて、虚子が呟いた。夢野は紅茶を皆に運びながら壺の中の生き物はタコではないかというが、
    タコ以外ではあるかもしれない。むしろなんだあれはとなっているが、日本人である夢野はタコで抑えている。
    盆を持ち、ティーカップに入れた紅茶を夢野は配る。

    「トトとかネコとかいるから壺ぐらいってなっちまうし、むしろ、たまに何かが壁に突き刺さる図書館の方が混沌としてないか」

    トトは徳冨蘆花が連れているホトトギスだしネコは帝国図書館には何匹もいるがこの場合はしゃべるネコだ。そんなのを見ていれば壺の中身が動いて壺ごと
    移動しているなんて些細なことになってしまう。

    「司書は包丁以外でも壁に突き刺せる。投擲だ。……美味しいね。このアッサム」

    「ありがとうございます。直ぐに飲み切れと言われました。やや古くなってきているので」

    「誰かに飲ませときゃいけるだろ。これ食べ終わったら原稿を書かねえとな」

    ドイルが誉めてくれたので夢野は穏やかに返すが泡鳴がいつの間にか固焼きポテトチップスを二袋目を取り出して食べだしているのを見て飽きれかけた。

    「原稿ですか。何の」

    「島田とアールピージーの短編小説をかいてどっちがうまく書けるかってのをやってんだよ」

    「面白そうだね」

    聞いてみれば泡鳴は島田清次郎と短編小説を書く対決をしているらしい。ドイルが面白がっていた。

    「俺も、アイツが落ち着いたら句会だな。自由律俳句を子規さんが作りたがっている」

    「固焼きポテトをやるぜ。これを食べたら落ち着くからよ」

    「渡しておこう。俳句はいくつかみていたが自由律となるとさらに言葉の欠片のようになるな」

    泡鳴が三袋目の固焼きポテトを出して、虚子に渡していた。虚子が受け取る。

    「ルビ俳句とかもあるらしいな。島田が調整してみようとして挫折してた。かっこよさそうだからって」

    「カッコイイは大事なことだ。どれも各々の色があって面白い。文豪もそうなのだろうが」

    「個性だな!!」

    「大事ですよね。個性って」

    「ありすぎるのも困るが」

    色や個性の一言で片づけて文豪たちは今日も過ごしている。騒がしいところは騒がしく、混沌ではあるけれども。


    【Fin】
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