明日は句会の日【明日は句会の日】
帝国図書館は本来は閲覧専門の図書館だったが、貸し出しができるようになったのだと種田山頭火は聞いていた。
文豪達の中では一番の新参者である山頭火ではあるが転生して数か月が経過し、図書館にもだいぶ慣れてきた。
「包丁が投げられるなんて思わなかった」
「怖かったよね。放哉!」
食堂の隅っこで尾崎放哉が座っている。山頭火は彼に声をかけた。怯えているようだったが聞くところによると廊下を歩いていたら、
ヤドカリみたいな壺が急いで逃げて行きその壺に向かって包丁が投げられたのだそうだ。包丁はヤドカリみたいな壺から外れて……壺が必死で逃げた……
壁に突き刺さった。投げたのは彼等を転生させた特務司書の少女であった。
「怖いのは包丁もそうだが、壺が悪いとか壁どうしようとかなってる連中だ」
「気にしてなかったよね殆ど」
「ほぼだろう! ……その本は何だ?」
原因は特務司書の少女が作った塩キャラメルナッツを壺が食べたからである。
壺、アレは何だと放哉はなっていたが文豪の一人であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトが抱えている壺だ。
中にはタコみたいな生き物がいる。
「これ? 借りてきたんだ。絵本だよ。当番だったから」
大きな本だった。
『三匹の山羊のがらがらどん』とタイトルに書いてあって三匹の山羊が書かれている。他にも芋虫が書いてある絵本とか沢山のネズミが書いてある
絵本があった。抱えていた本をテーブルの上に置くと山頭火は放哉の真正面に座る。
文豪達はたまに図書館の手伝いを頼まれる。ノルマさえこなせば後は自由なので文豪たちはこなしていたし、こなさなかったら特務司書の少女が追いかけてくる。
最低限にはしてあるらしい。
放哉はカウンターには出たことはない、出たら出たで混乱するからそこの仕事は振られない。
試しに放哉は『三匹の山羊のがらがらどん』の本を手に取り、ページをめくってみるが、
「……物理が勝つ?」
「凄いよね! そうだ。放哉。明日には句会があるから出る?」
「話題が変わりすぎだ」
「思い出したから」
句会。
毎月定期的にやって聞いた話によれば維持をしてきた会ではあるらしい。当初のメンバーでは俳句を専門にやっていたのが、
松岡子規しかいなかったが、だからこそと毎月毎月句会をやっていたのだそうだ。彼の弟子である高浜虚子と河東碧梧桐が来たお陰で、
専門家が増えたらしい。文豪はヒトによっては俳句も書けば小説も、絵も書いたりする者もいるが
「句会。おやつ。でる。食べます」
「俳句を作れよ!!」
いきなりハワード・フィリップス・ラヴクラフトが現れた。おやつ目当てらしい。
放哉は鋭く壺を抱えた彼に叫んだ。
【Fin】