職場に内緒で私的な調べ物の手伝いを
頼んでるライトさん 表向きは運送業……なのかな?
余計な口を挟んでこないし 仕事が早くて
重宝してるけど なんか距離が近いような……
物理的な意味で。
僕んちのソファーの端と端に座ってたはずなのに
なんで男同士が鼻息がかかる距離で見つめ合ってるのさ
正直サングラスの下の素顔がすこぶる好みなだけに
ちょっと動いたらキス出来そうなこの状況は
かなり心臓によくない
動くべきか動かざるべきか それが問題だ
……今日も綺麗だな
チームに黙ってやってる副業の雇い主
悠真は役所勤めで都会じゃ有名人らしいが
郊外で暮らす俺にはあまり実感がない
報告書に目を通す金色の瞳がきらきらと輝いて
——星みたいだ 夜空で輝く無数の光
もっと近くで見たいと思うだけのつもりが
実行に移してしまっていた
近過ぎる あまりにも不審者だ
我に返って離れようとした途端 バランスが崩れた
——今口になんか当たった
耳まで赤くして離れようとするライトさんの
手首を捕まえて引き寄せる
「すまん 今のは事故で…」
「キスされるの待ってるのかと思ったよ」
「ちが……んんっ!」
お望み通り唇を奪った途端 僕から逃げようと
もがく身体から力が抜けた
怯えて縮こまる舌を引き摺り出して絡め合うと
目眩がするほど気持ちいい こんなの初めてだ
歯並びや粘膜をなぞると腕の中の身体が
びくびくと震えて あちらも同じ状況だと教えてくれる
「キスだけでこれならさ 最後までしたら
どうなっちゃうのかな」
「……それも依頼に入るのか?」
仕事とは関係ない と言ったら帰ってしまうのだろう
そんなのはいやだ せっかくの機会を逃したくない
金額で解決出来るならそれに越したことはないのだ
「そうだよ 僕の性欲発散も込みで」
「……なら好きにすればいい」
ソファーに押し倒した俺の腹に跨った悠真は
シャツを脱ぎ捨てると俺の額に口付けた
「優しくするね」
目の前には流れ星がふたつ
――ああ 星が墜ちてくる
手が届かないはずのあの星が