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    coco_mori7

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    エアコレ2022展示②シアセレ
    痕をつけてみたいセレスちゃんの話

    勝敗の行方は シアンには噛み癖がある。例えば、セレスの首筋だったり、太腿だったり。彼女の身体の至るところに、彼のつけた赤い花びらが舞っている。セレスも最初はその行為を恥ずかしく思っていたのだが、今ではシアンに肌を吸われる度に悦びで震え上がってしまうから、慣れというのは恐ろしいものだ。
     だが、そんなセレスにも未だ慣れていないことがあった。

    「へたくそだな」
     ふ、とシアンが鼻で笑う。やはり、今日もだめだった——と、セレスはがくりと肩を落とした。
     彼女がたった今口付けたのは、シアンの鎖骨だ。シアンと同じように自分も痕をつけてみたい、とそう思ってはいるのだが、なかなかうまく出来ずにいる。ほんのりと色が濃くはなるのだが、少し時間が経てば、あっという間に跡形もなく消えてしまう。その度にシアンには、先程のように揶揄われてしまうのだ。
     こういうときのシアンは、実に意地が悪い。やり方を教えてくれるわけでもなく、ただセレスが懸命に口付けているのを傍観しているだけ。見様見真似でやってみろ、とまで言われてしまえば、セレスはシアンを頼ることも出来ない。
    (……本当に意地悪だわ)
     セレスがむすりと唇を尖らせるも、シアンは愉しげに口角を吊り上げているだけだ。それが悔しくて、悔しくて、どうしようもなく悔しくて——痕をつけるのが難しいのならば、何か他のことで彼に見せつけてやるしかない、とセレスはそう思った。
     そして、セレスはシアンの胸へと体当たりをするかのごとくぶつかって、彼を寝具へと押し倒しにかかった。気の緩んでいたシアンは、すんなりと後ろへと倒れ込み、シーツへと沈み込んでいく。しかし、シアンが驚いたように目を丸くさせたのはほんの一瞬で、それからすぐににやりと意地の悪い笑みへと変わっていった。
    「自分から押し倒すとは、随分と大胆になったもんだな、セレス」
     いつもならば、セレスはここで恥ずかしがってしまうのだが、今日はそう簡単にやられるつもりはない。
    「シアンさん、あなたが余裕でいられるのも今のうちですよ」
    「へえ、言うようになったな。それなら、お手並み拝見させてもらうとするか」
     やはり、シアンはまだまだ余裕そうだ。セレスには何も出来っこないと、そう思っているのだろう。シアンの身体へと覆い被さったセレスは、ゆっくりと二人の距離を詰めていった。
     セレスが狙おうとしているのは、彼のくちびるだ。シアンにもそれは分かっていたのだろう。どうぞ、とでも言わんばかりに、彼は微笑みながら目蓋を閉じた。
     彼女自らシアンに口付けをしたことは、前にも何度かある。しかしそれでも、やはり恥ずかしいことに変わりはない。だが、ここで躊躇っていてはだめだ。またシアンに揶揄われてしまう。セレスを突き動かすのは、そんな感情だった。
     セレスは、す、と小さく息を吸い込んで、彼のくちびるから呼吸を奪っていく。ぴたりと互いの熱を重ね合わせながら、その温かさと柔さを身体中へと染み込ませるように堪能する。セレスは当然、この可愛らしい触れるだけのキスで終わらせるつもりはなかった。
     さすがのシアンでも驚いてしまうような、深くまでをも味わい尽くすような、そんなキス。いつもならシアンが与えてくれるそれを、今日こそは自分がやってみせる——そんな決意を密かに抱いていた。
     手始めに、シアンがしてくれるように、彼のくちびるを舌で撫でてみる。そうすると、セレスはいつも簡単に口を開けてしまうのだが、シアンは一筋縄ではいかなかった。ぴったりとくっついたくちびるが解れることはなく、頑なに閉じられたままで。焦れたセレスが目を開けてみると、彼もまた目を細めながら彼女を見つめていた。
    「っ、!」
     驚いて声を上げそうになったが、セレスはどうにか堪えた。シアンは確実にわざとやっている。彼女が次にどんな行動を起こしてくれるのか、シアンはそれが知りたいのだろう。素直に身を委ねてくれればいいものを、本当にどこまでも意地悪な男だ。
    (シアンさんの、ばか……!)
     心の内でそうやって叫びながら、じとりと彼を睨みつけてやる。しかし、セレスの精一杯の睨みは、シアンにはまるで効果はなかった。むしろ、逆効果で、彼のその瞳は「早くしろ」と訴えているようにも見える。だったら、素直に口を開けてください——と正直に言えたらどんなに良かったか。だが、自分でやると決めた以上、ここで折れるわけにはいかなかった。
     どうしたら、シアンが口を開けてくれるのか。セレスは必死に考えた。しかし、その一瞬の隙を見せたのがいけなかった。
    「時間切れだな。やはり、お前にはまだ早い」
    「んむっ、」
     がぶりとセレスのくちびるが食べられてしまったのだ。それも、シアンの口によって。
    「っ、し、しあんさっ、今は私が……!」
    「もう待たん。俺がどれだけ焦らされたと思ってる?」
     口を開けてくれなかったのは、あなたでしょう。そう言いたいのに、言えない。またもや、セレスのくちびるが塞がれてしまったせいである。
     そして、僅かに腰を浮かせたシアンは、上に覆い被さる彼女の身体をゆっくりと揺すっていった。夜の情事を思わせるかのようなその腰つきに、セレスの身も小さく震え出してしまう。
     シアンが与えてくれるもの全てが、セレスにはとっては快楽となり、熱となり得るのだ。この状況からの逆転は、もう無理だ。それが分かっていたセレスは、潔く負けを認めるしかなかった。
     セレスはくたりと弱々しく、シアンの胸へと縋りつく。そして、彼の口付けに酔いしれるように、目蓋を閉じた。
     果たして、セレスがシアンに勝てる日は来るのだろうか——。
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