!現像失敗──そうして、それは足からよくわからない生物に捕食され、分解されて溶かされたのでした。
ちゃんちゃん。
──なんて言って簡潔に完結をしてもよかったのだけれど、どうやらそんな終わりを走馬灯が許してくれなかった。
走馬灯が許してくれない割には、思い浮かんでくるフィルムは随分と枚数が少ない。
コマ割りのようなそれ。連続した記憶は飛んで飛んで離れている。
つぎはぎのつなぎあわせのような連続写真。
私が写っているのに、随分と私の姿はぼやけていた。
私だけのラストショー。
なのに、その私の姿は曖昧だった。
わからない。
これが足を噛まれている痛みから頭にノイズが走って、思い出すものも気が狂っちゃってるのか。
自分の姿を映してこなかったからが故の曖昧さなのか。
私に毛頭判断がつかなかった。
つかなかったことにした。
でも、それが自分だけじゃなかった。
暖かかった頃から冷え切った頃まで。
脳裏に浮かんで、沈んで、映る人はみんな曖昧だった。
父親の顔が光で見えない。
母親の顔が陰っている。
執着していた叔父さんの顔も、サングラスだけがやたらと目立って輪郭は解けている。
旅先であった人は影のモブだ。
ちょっとだけ人と交わった、あの島での人たちもそうだった。
薄味の記録。噛み締めようとしても味がしない。
吐き出したくても口内と喉奥に張り付いている。
頭の中のラストショー、レビューの評価は最低値。
観客は一人きり。
ただ、一人のためなのに。
確かに死ぬ時に孤独に死ねたようだ。
「……はっ、ぁ」
食いしばっていた歯が解けて、息を吐き出すような浅い声が出て。
もう一回噛み締めたところで、目に溜まり切ったものがボロボロ地面に落ちていった。
大粒の透明なの、もう何年も出てきてなかった。
心臓がバクついている。それもいつかは弱くなるか、その前に飲み込まれるかな。
孤独な人生は随分と空虚だ。
斜に構えて過ごし続けた結末なんて分かりきってたのに。
結局、辿り着くところが一人なのが嫌だからみんな足掻くんだって。
痛くて泣いてるんじゃなくて、あんまりになんにもなくて笑いながら反射的に溢れている。
叔父さんもこんな痛いのを持って死んでったのかな。
だとしたらちょっと恨んでしまうよ。
あなたの言葉に縋ってただけだって、でもこれって責任転嫁だ。
私の人生の切り取り。切り取るほどのハイライトがなかった。
私の思い出はアルバムには貼れない。
飾っても変な言葉が飛んでくるだけ。
「…ゔー、ぅ」
漏れるのは歯軋りの奥からの声だけ。
ほんとに紡ぎたいのはアホくさの一言で。
──次、口を大きく開けたときには、それの姿は見えなかったことだろう。
骨のひしゃげる音。
肉の水音。
飲み込んで。
ご馳走様でした!