庭先に赤い実が生えている。
長く短い旅を終えた。
一足早く退学した神代類は同い年の卒業を見送ってしばらくしてから、旅に出た。旅に出たのは冬で、戻ったのも冬だった。思わずからだを縮こまらせてしまうような寒さも、吐く息の白さも、大きな霜柱も、何を見ても楽しかった。
それでも冬は他の季節と比べると色彩が貧しい。夏は艶やかに輝いていた緑の葉は、今はすっかり色褪せてしまっている。季節を問わず咲き続けているのではないかと思われた庭先の色とりどりの花々も、皆盛りを過ぎて枯れてしまった。何も植えられていないプランターは寂しげに見える。種は土の下でまだ春を待って眠っていることだろう。
人々が身に着ける衣服は黒・グレー・ベージュに白。革靴の茶も深く深く、沈んだ色をしている。
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