アリストクラットの戯れ その古城は月に照らされ、幽玄に浮かんでいた。
もともとは白亜の城だったのだろうが、壁面は灰色と混じり複雑な風合いを醸し出している。城の土台のレンガと、川に隣接している部分は風化して、一目見れば随分昔に建てられたものだとわかった。
禰豆子は招待状を手に、その城へ向かうボートに揺られていた。
森の中を流れる川を悠然と下る。古めかしさがそう思わせるのか、禰豆子は川のほとりに浮かぶ古城を認めると、少し懐かしさを感じた。
城門の前では同じようなボートが何艘も留まっていた。ボートに乗れる人数は片手で数えるほど。客たちは絢爛たる衣装を身にまとっていたが、一様に暗い色味が目立つ。
裾や足元を気にしながら次々と降り立ち、光の漏れている城内へ吸い込まれていく。
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