Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    まさよし

    https://lit.link/ma34p

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    まさよし

    ☆quiet follow

    オーカイ - ignimob
    https://poipiku.com/1570099/11442498.html
    ↑ こちらの絵から勝手に妄想を膨らませて書いたオーカイです

     オーエンは、俺の目を奪った、俺の仲間を傷つけた因縁の相手だった。賢者の魔法使いとして共闘することが必要だと頭では理解していても、理性では抑えきれないほどの怒りを覚えていた。俺は今、そのオーエンと付き合っている。
     もう一度言う。俺は今オーエンと付き合っている。
     誰に言っても意味がわからないと言われるだろう。当事者である俺もそう思っている。人によっては、なにがあったんだと心配してくれるやつもいるかもしれない。実際に、心配されるべきことがきっかけなのでその反応は間違いじゃない。
     簡単に説明するなら、無理やり行為に及ばれた。行為というのは……わざわざ説明するのはさすがに勘弁してほしい。無理やり、同意のないことが行われたと思ってくれたらいい。
     ここまでなら、付き合うきっかけになるどころか、今後はなんとしてでも距離を取るべきことが起きているだけだ。意味がわからないのはここからで、俺はそれを……なんというか、そうすべきだと思えなかった。自分でも受け止めきれなくて曖昧な表現になったが、要するに、俺はそれに嫌悪感を抱けなかった。まったくと言っていいほどに。
     まず、その頃にはもうオーエンへの怒りは、完全に消え去った、とまでは言えないが、あまり意識することがなくなるくらいには収まっていた。それから、オーエンのことを少しは理解出来ているつもりでいた。気まぐれなこと、甘いものが好きなこと、それから、本当はきっと、誰かと友達になりたいこと。そしてその誰かには、俺が当てはまっていること。
     そうやってともに過ごした時間があったからか、ああそうだ、こいつはしっかり悪いやつだったな……とは思ったけれど、不思議と嫌悪感はなかった。むしろ、同情に似た気持ちさえ芽生えていた。
     苦しいでしょ、悲しいでしょ、優しい気持ちで歩み寄ってやってた相手にこんなふうに裏切られて最悪の気分でしょ? 口ではそう笑っていたけれど、その表情は、お願いだから嫌いになって、と、そんな感情をにじませているように見えたから。いつか嫌われるくらいなら今のうちに嫌いになってほしい、なんて、壊れる前提の友情しか想像出来ないこいつがかわいそうに思えたから。
     ……まあ、全部俺の思い込みなのかもしれないけど。でも、そこで俺がオーエンを拒絶しなかった結果がこの関係なのだから、まったく的外れではなかったのだと思いたい。

     付き合いはじめたあとも、オーエンの態度は特に変わらなかった。からかわれて、挑発されて、言ってることがわからなくて聞き直したら不機嫌になってどこかに行ってしまう。俺もそれに慣れていたし、それくらいの、友達みたいな恋人、という表現が似合う関係が心地よいと思っていた。いや、友達と呼んでいいのかもわからないようなコミュニケーションの取り方ではあるが。とにかく、そんな今までと変わらない日常が続いていた。
     続いていた。過去形にしているのは、最近そんな日常が変わってしまったからだ。しまった、と言うとなにか悪いことが起きたのかと思われるかもしれないが、決してそういう意味ではな……いや、少しあるのか。
     別に、無理やりの行為が増えたとか、魔法で痛めつけられるようになったりとか、そういうことが起こっているわけじゃない。むしろその逆だ。
    「ねえ」
     ふ、と背後に現れたオーエンが、そのまま俺を後ろから抱きしめてくる。ああ、来てしまった。恋人相手に来てしまった、なんて言い方をするのはよくないとはわかっているが、どうしてもそう思ってしまう。
    「……好き」
     俺の返事を待たずに、オーエンはそう続ける。臆面もなく耳元でささやかれる。
    「好き」
    「……」
     正直、どう反応したらいいのかわからなかった。念のために言っておくと、嫌いだとか気持ち悪いだとか、そんな感情は一切持っていない。ただ、本当に、どうしたらいいかわからないんだ。
     その、えーと、……ちょっとうそをついた。なんというか、わかってるんだ。俺もだよ、って返事をして抱きしめるのが一番いいんだろう。実際に俺もオーエンのことが好きなんだから。
     そうわかっているのに、俺はいつも、返事すらせずに突っ立って、その溢れんばかりの愛の言葉を聞き続けることしか出来なかった。自分がこんなに奥手なやつだとは思っていなかった。
     おまえも言ってよ、とぽかんと一発やってくれたら、きっと俺だってあいつを抱きしめて、髪をくしゃくしゃに撫でて、うっとうしいって怒られるくらいに離れないでいられるだろう。
     ……そうだ。オーエンが、そうしてくれないからだ。そうしないってことはつまり、あの言葉は、からかいでも挑発でも手の込んだ嫌がらせでもない、たぶん本心からの愛の言葉なんだろうってわかるからだ。
     オーエンが、そんな柄にもないことをするから。俺だって柄にもなく赤面して、 俺も好きだ、なんて簡単な言葉も言えなくなってしまう。俺も好きだ、って言った先にあることをこんなに知りたいのに。
    「ねえ、好き」
     見返りを求めない声に急かされる。その先を知りたい。いや、なにをするかは知っている。きっと恋人らしいことをするんだろう。恋人になる前に無理やりにされたあの行為を、今度は愛し合う恋人としてすることになるんだ。恋人になる前ですら愛おしかったあの行為を。
     どうなるか知りたい。でも怖くて踏み出せない。だって、あそこに本当に、恋人として育まれた抑えきれないようなこの愛があったとしたら、きっとどうにかなってしまうから。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💘🙏🙏😭👏❤👏💖💖💗😭👏💖💖💖💖💖😍😍💖😍😍❤❤🇱🇴🇻🇪⤴⤴❤☺☺☺💖💒💒💒😭❤❤👏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works