孤島にいるだけのぺご君と番長水色だ。眼前に広がる光景を言い表す言葉がそれしか出てこなかったことに、俺は久しぶりに自分の無力さを感じた。いいや。それは本当に瑣末なことだ。もっともっと深い無力感を俺たちは噛み締めている。
「悠……」
「どうした」
「蟹が歩いてる」
いや、俺だけかもしれない。
そこは、外周を水色の海に囲われる、砂浜しかない孤島だった。孤島と呼ぶのも贅沢だ。湖にでも浮かぶ、ちょっと大ぶりな浮島といったほうがちょうどいい。とにかく驚くほど小さな島で、浜辺をなぞって歩いてみると、ものの十数秒で一周できてしまう。校庭に敷かれたトラックのほうがずっと大きいぐらいだ。
そんな島にはいくらかのぺんぺん草と、刺しただけのような一本のヤシの木しかなく、あとは俺と蓮と、蟹しかいなかった。
764