芳香に満ちる(3)「飯」
毛布を羽織り、横長のソファに座る人物に声をかける。白髪の相手はこちらを振り向いて「はあい」と声を上げた。
このやり取りももう何度目だろうか。あの三連休以降、ギルモアはヒートでなくとも頻繁に自宅に帰るようにした。男は体調を崩していることもあれば、ピンピンしている日もあった。必ずしも天候と体調が連動するわけではないらしいのだが、大きく気温や気圧の変動がある日は決まって体調を崩した男の元へ帰った。
いちいち外出届を出すのも面倒だと、ギルモアは宿舎を出て家に住まうための申請を出した。先日申請が通り、宿舎に置いていた荷物を全て自分の部屋に移したところだ。
ローテーブルの上に料理を並べる。今日の夕食は、ギルモアの作ったミートグラタンとサラダだ。
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